野球善哉BACK NUMBER
一度チームワークを捨て、その後に。
大阪桐蔭を支える個と団結力の哲学。
posted2018/08/21 19:20
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Hideki Sugiyama
常勝・大阪桐蔭を取材していると、選手や指導者たちから決まって聞こえてくるフレーズがある。
それは決勝戦を前に、副キャプテンの根尾昂から再び発せられた。
「上手くいった試合もありましたけど、上手くいかない試合も何とか勝つことができた。全員で勉強できて決勝戦を迎えることができました。今日が甲子園で最後の試合になるので勝って終わりたい」
大阪桐蔭が常勝軍団でいられるのは「勉強」という姿勢を保ち続けているからに他ならない。目の前の試合で勝利を目指すと同時に、試合を学びの機会として、自身の成長のための機会と位置づけているのである。
そうしたマインドを生み出した背景には、2008年から続く西谷浩一監督のチームマネジメントがある。
その根幹は、圧倒的な「個」の力と団結力だ。
「野球は団体スポーツですけど、個別性が高い」
しかし、この2つは相反するものでもある。なぜなら、個を高めることにこだわれば、団結力は生まれにくい。一方、団結力を中心にチームづくりを進めすぎると、今度は個が育たないからだ。
西谷監督はこの2つを両立するために、2段階のチームづくりを導入している。
個性を育む時期と、力を結集する時期の2段階である。西谷監督はこう話している。
「個の結集がチームじゃないですか。小さな粒が集まったら、こぢんまりしたチームにしかならないので、いかに1人を大きくできるかということです。
野球は団体スポーツですけど、個別性が高いのが特徴です。なぜなら、絶対にみんなに打席が回るからです。個別性が高い競技であるので、チームワークと個性の両方の要素を持っていないといけない。オフなどの個を高める時期に、みんなが同じ練習をしているようではいけないということです」