スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
やはりロナウドの穴は大きいのか。
アトレティコとレアルの好対照。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byGetty Images
posted2018/08/19 17:00
シメオネ監督のもとでの鉄の結束はいまだ健在。今季のアトレティコはバルサ、レアルの牙城を切り崩せるか。
グリーズマンを早い段階で下げたが。
1-1で迎えた57分にオフ明け間もないグリーズマンを下げた時点では、シメオネもその点は割り切って考えているのだと思っていた。
63分にフアンフランのハンドでPKを与えて逆転され、ロドリゴ→ビトーロの交代で反撃を試みたものの後手を踏んだ印象は否めない。79分の同点ゴールも、自陣深い位置でスローインに逃げることを嫌ってボールを残したマルセロの判断がなければ、生まれることはなかっただろう。
2-2とした後は無理に攻めず、3人目の交代でトマスを投入したのは延長戦に入る直前のこと。延長戦に入れば4人目の交代が可能なだけに、90分で勝負を決めに行く采配とは言えなかった。
しかし、結局はこれらの交代策が勝利を引き寄せることになる。
79分の同点ゴールをアシストしたコレアに続き、98分の逆転ゴールはトマスの果敢なボール奪取と中央をよく見たクロス、6分後の4点目はジエゴ・コスタの落としを受けたビトーロがダイレクトで送ったラストパスから生まれた。
途中出場の彼らがチャンスを作り出し、決めたのはボランチのサウールとコケだった。あの時間帯にリスクを冒してペナルティーエリア内まで駆け上がった2人の勇気と走力も、讃えるべき勝因の1つである。
積極補強で選手層が厚くなった。
1度目は余力を残せず、2度目は優勢に進めながら決め手を欠いた。
そんな過去2度のチャンピオンズリーグ決勝とは対照的に、今回の延長戦では攻めの姿勢を崩すことなく、1ゴールのみならず2ゴールを奪って勝ち切ることに成功した。
さらにはグリーズマンを早い段階で下げながら、ベンチ要員が揃ってゴールに絡んでいる。こうした采配が可能になったのも、今夏に行った積極補強の賜物である。
「この結果の背景にはクラブの、ミゲル・アンヘル(ヒル・マリンCEO)やエンリケ(セレソ会長)の素晴らしい仕事がある。クラブは成長している。新スタジアムもでき、中心選手たちは他クラブへの移籍を望まなくなった。彼らが良い仕事をしている証拠だ」