スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
やはりロナウドの穴は大きいのか。
アトレティコとレアルの好対照。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byGetty Images
posted2018/08/19 17:00
シメオネ監督のもとでの鉄の結束はいまだ健在。今季のアトレティコはバルサ、レアルの牙城を切り崩せるか。
バルサを断ったエースも高い士気。
ベンチ入り禁止中のため、終始落ち着かない様子でスタンドから試合を注視していたシメオネは、試合後の会見でクラブとチームの成長ぶりに目を細めていた。
シメオネの言う通り、今夏もバルセロナのオファーを断ったグリーズマンを筆頭に、コケやサウール、ゴディン、ヒメネスら中心メンバーのほとんどがチームに残った。
代役の補強も万全で、主将ガビの後釜にロドリゴ、ブルサリコの抜けた右SBにはアリアス、モジャに代わる第2GKにはアダンを獲得。さらにレマル、ジェルソン・マルティンス、カリニッチといったゴールに絡める選手が加わったことで、攻撃面で采配の幅は確実に広がった。
既存メンバーの好調ぶりも頼もしい。1月の実戦復帰から徐々に調子を上げてきたD・コスタは、全4ゴールに絡んだこの試合で完全復活を印象付けた。左SBにはワールドカップで大活躍したルカが台頭し、フィリペ・ルイスの定位置を脅かしている。
過去最高の戦力を揃えた今季最大の目標。それは本拠地ワンダ・メトロポリターノが決勝の舞台となるチャンピオンズリーグの初制覇にある。
「良いプロジェクトがあるから残った。このクラブを、チョロ(シメオネ)を信じているから。自分が間違っていなかったことを今日改めて確認できたよ」
バルセロナのオファーを断り、アトレティコでの悲願達成に賭けたグリーズマンは、嬉しそうにそう話していた。昨季のヨーロッパリーグを皮切りに、ワールドカップ、そしてこのスーパーカップを立て続けに勝ち取ったのだから当然だ。
ロナウドを放出したレアルは……。
充実した戦力を揃え、この上ない形でシーズンの幕を開けたアトレティコとは対照的に、R・マドリーはこの敗戦でいよいよ危機感を募らせることだろう。
シーズン平均50ゴールを決めてきたクリスティアーノ・ロナウドを放出した今夏、これまで行った補強はクルトワやルニン、オドリオソラら守備の選手ばかりで、攻撃陣には18歳のビニシウスしか加わっていない。
新たなエースとしての重責を担うベイルは、ベンゼマと共に王様ロナウドがいなくなったことでのびのびとプレーしている印象を受けた。27分の同点ゴールはその2人が生み出したものだ。