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イニエスタ不在が際立つバルサ。
希望の灯は19歳の超新星プッチか。 

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吉田治良

吉田治良Jiro Yoshida

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photograph byGetty Images

posted2018/08/18 11:30

イニエスタ不在が際立つバルサ。希望の灯は19歳の超新星プッチか。<Number Web> photograph by Getty Images

マイナーチェンジはあれど、バルサを支えるのは試合を掌握する中盤のはずだ。プッチは偉大な先達に続けるか。

イニエスタがいないだけで……。

 入団間もないビダルにはまだエクスキューズが許されるだろうが、それでも屈強な肉体を誇る彼がひとり中盤に加わるだけで、バルサのフットボールがずいぶんと硬質に映ったのも確かだった。いや逆に、イニエスタをひとり欠いただけで、バルサのフットボールから連動性や柔軟性が失われたと言うべきか。

 時間を、緩急を自在にコントロールし、攻撃のスイッチを入れる役割を一手に引き受けていたイニエスタの退団によって、これまで以上にメッシが低い位置に下がってボールを捌き、前線にスルーパスを供給するシーンが増えている。

 キャプテンマークも同時に引き継いだメッシが、ロシア・ワールドカップのショックを引きずることなく好調を維持し、この2試合でも別格の存在感を示したとはいえ、彼に万が一のことがあれば、攻撃が一気に停滞しそうな気配も漂うのだ。

さらに直線的なスタイルに転換?

 もしかするとバルベルデ監督は、イニエスタとの別れを機に、昨シーズンよりもさらに縦へのスピードを意識したスタイルへと転換を図ろうとしているのかもしれない。

 複数人が連動して丁寧に横パスをつなぎながら相手ディフェンスを揺さぶり、見つけた綻びにくさびを打ち込む。そうした手間暇を惜しまないバルサ流のポゼッションスタイルが、徐々に時代のニーズと乖離し始めている現実は、映し鏡のようなスペイン代表がロシア・ワールドカップで図らずも証明してくれた。

 だとすれば、もっと個の力を前面に押し出し、直線的にゴールを目指すべきではないか。宿敵レアル・マドリーがそうしたスタイルでチャンピオンズリーグ3連覇の偉業を成し遂げ、かたやバルサは2015-16シーズン以来3年連続でベスト8止まり。欧州制覇を最大の目標に掲げるのであれば、「バルサイズム」と距離を置くのもひとつの考え方だろう。

 ルイス・エンリケ(現スペイン代表監督)がバルサを率いていた時代も、メッシ、スアレス、ネイマールの「MSN」に多くを依存するカウンタースタイルを打ち出し、就任1年目の2014-15シーズンには3冠を達成している。

 ただ、そこにはあくまでもバルサイズムをピッチ上で体現しようと模索する、イニエスタという“歯止め”があった。だからこそ、カウンターだけにはならなかった。

【次ページ】 プッチはイズムを絶やさぬ火種。

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