プッチはイズムを絶やさぬ火種。

　しかし、ジョゼップ・グアルディオラ、シャビ、イニエスタと続いた、カンテラ出身のコンダクターの系譜がこのまま途絶えれば、いよいよ本当にバルサからバルサらしさが消えてしまいかねない。この夏はバイエルンからラフィーニャの実兄でスペイン代表のチアゴを呼び戻そうと画策したが、それも失敗に終わっている。

　希望を託せるとすれば、カンテラの19歳、リキ・プッチかもしれない。

　まだ中学生のような風貌で、しかもマッチ棒のような痩身ながら、ボールタッチは柔軟かつ軽快で、視野が広く、アイデアも豊富。ICCで注目を集めた若武者は、スーペルコパこそ出番はなかったが、ガンペール杯では後半の頭からインサイドハーフの左に入り、堂々とゲームをコントロールしている。線は細いが、"ボールを隠す"技術があって、簡単にはロストしない。

　今夏、フロントはそんなプッチを売却しようと考えていたようだが、それを阻止したのが、他ならぬバルベルデだった。彼もきっと、バルサイズムを絶やさぬ火種として、この若者に大きな期待を寄せているに違いない。

　一部にはアルトゥールを「イニエスタの後継者」に推す声もあるが、ガンペール杯の後半がそうだったように、彼の左右に振り分けるパス捌きはピボーテ（アンカー）のほうが生きるかもしれない。つまりはブスケッツの後継者だ。

　個人的な推しはプッチだが、おそらく当面はバルサBが主戦場だろう。しかし、かつてルイス・ファンハールがシャビを見出したように、フランク・ライカールトがイニエスタに重責を与えたように、いつかバルベルデがプッチを引き上げる時が訪れると信じている。

　イニエスタの退団で、岐路に立つバルサイズム。しかし、長年培われてきた伝統のスタイルが、そう簡単に息絶えるとも思わない。