スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
L・エンリケがスペイン新監督に。
懸念は無愛想とバルサ、レアル。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byGetty Images
posted2018/07/24 11:00
ロシアW杯で16強敗退に終わったスペイン。ルイス・エンリケ新監督のもと、かつての栄光を取り戻せるか。
メディア対応の粗悪さも……。
一方、カタルーニャ系のスポルト紙は「ルビアレスのレアル・マドリーへの挑戦」とし、ルビアレスがロペテギの引き抜きで対立したレアル・マドリーへの当てつけとしてバルサ出身者を選んだというニュアンスで報じていた。
代表監督は出自や所属クラブに囚われることなく、中立公平に選手を選考しなければならない。ところが様々なイデオロギーが共存するスペインでは、角が立たない選択をすることは実質的に不可能だ。
例えばレアル・マドリー出身の監督がバルサよりレアル・マドリーの選手を1人でも多く呼べば、カタルーニャの人々は「彼はマドリディスタだから」と解釈する。その逆もしかりで、全国民を満足させることは難しい。
それでもレアル・マドリー出身のビセンテ・デルボスケやロペテギは、その人柄とポリティカル・コレクトな言動に徹することで和を保ってきた。しかし、ルイス・エンリケにはメディア対応の粗悪さというもう1つの問題がある。
「今さら変わるのは難しいね」
就任が決まってほどなく、テレビの突撃取材でその点を指摘された際、彼は次のように返している。
「(メディアへの対応は)これ以上改善できない。君たちに相応しい扱いをするだけだ。私はもう48歳。今さら変わるのは難しいね」
あからさまに無愛想な受け答えをしたり、特定の記者を意図的に攻撃したり。バルサの監督時代に見られた大人気ない言動を繰り返すようであれば、長年RFEFが維持してきた「ファンやメディアに開かれたラ・ロハ」というイメージを台無しにしかねない。
とはいえ、何よりも重要なのは結果であり、プレー内容だ。繰り返すが、その点においてルイス・エンリケは現在のラ・ロハにとって最適な指導者である。