スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
L・エンリケがスペイン新監督に。
懸念は無愛想とバルサ、レアル。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byGetty Images
posted2018/07/24 11:00
ロシアW杯で16強敗退に終わったスペイン。ルイス・エンリケ新監督のもと、かつての栄光を取り戻せるか。
積極性と厳格さはいい刺激に。
ワールドカップの開幕直前にレアル・マドリーの誘いになびいたフレン・ロペテギとは対照をなすその心意気は、ルイス・ルビアレスRFEF会長が第一に求めた新監督の条件だったはずだ。
それだけではない。
キケ・サンチェス・フローレス、ミチェル、パコ・ヘメス、ペペ・メル……。
現在フリーのスペイン人監督の中で、経験、実績ともにルイス・エンリケに匹敵する人材はいなかった。
以前から名が挙がっていたベティスのキケ・セティエン、ワールドカップで株を上げたベルギー代表のロベルト・マルティネスらを引き抜くことも難しかった以上、現時点ではベストの人選だったと言える。
選手、監督としていくつもの国際大会を戦い、ローマやバルサでトッププレーヤーたちを指導してきた経験は申し分ない。
何より攻守にわたるアグレッシブさや素早いトランジションを加味し、バルサのポゼッションスタイルを進化させた彼は、同様の進化を必要としている現在のラ・ロハに打ってつけの指導者である。
選手との衝突も厭わない厳格な姿勢も、行きすぎた放任主義によって内部規律が失われて久しい現在のチームには良い刺激になるはずだ。
不安要素はバルサ、レアルとの関係。
一方で、不安要素もある。
レアル・マドリーからバルサへ移籍してバルサのアイドルとなり、カタルーニャ愛とアンチ・マドリディスタを公言してきた経歴はその1つと言える。
彼の就任決定に際し、各メディアが見せた反応は象徴的だった。
例えば、首都系メディアのディアリオ・アス紙は、彼の好戦的な性格を懸念して「ハイリスクな選択」と指摘している。