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エディー・ジョーンズが語る、
「成長し続けるチーム」の作り方。
text by
竹鼻智Satoshi Takehana
photograph byKo Kawaguchi
posted2018/07/23 11:30
エディー・ジョーンズの言葉に惹かれるのはラグビー関係者だけではない。組織のマネジメントはどの世界でも共通の関心事なのだ。
ストレスと休息で成長を促す。
「そしてチームにストレスを与え、その後に休息を与えることにより、成長を促す。全くストレスを受けないチームは成長などせず、現状維持が続くだけ。また、過剰なストレスをかけ続けていても、今度はチームが壊れてしまう。
限界に近いストレスを一定期間与え、その後に適切な休息を与える。これを繰り返すことにより、チームを成長のサイクルに乗せていく。どの程度のストレスをどれだけの期間与え続け、その後の休息をどの程度与えるか。この適切なバランスを見極め、実行していくのがリーダーの仕事である」
ラグビーファンには知る人も多いだろうが、ジョーンズ氏がラグビー日本代表を率いて挑んだ2015年ワールドカップ前の代表合宿では、選手たちは肉体的にも精神的にも限界ギリギリのところまで追い込まれた。
大会直前に休息を与えられ、大会本番で日本ラグビー史上初のグループステージ3勝という快挙の裏には、こうした信念に基づいた理論があった。
組織管理はラグビー以外にも通用する。
ワールドカップ直前の地獄の合宿だけではなく、2012年の監督就任以来、日本代表を徹底的に鍛え上げてきた闘将。2014年にはテストマッチ11連勝、日本ラグビー史上初めて世界ランキング9位につけるという実績も挙げている。ストレス、休息、成長、というサイクルを実際に繰り返し、明確な目標を達成したチームの実例である。
講演会を終えたジョーンズ氏は、舞台裏で参加者との記念撮影や書籍のサインにも笑顔で応じた。ラグビーチームの監督としては厳しい指導で知られるが、気さくで近寄りやすい一面も見せる。関係者との会食へ向かう前の空き時間に、講演の内容を更に掘り下げるための取材にも、快く応じてくれた。
「私はラグビーチームの監督として経験を積んできたが、今日話したような組織管理のポイントは、他のスポーツにも十分通じるもの。スポーツごとに異なる特定の要素はあるが、全てのスポーツに共通する基本原則というものは、間違いなく存在する」