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公式カメラマンだけが踏み入れた
サンウルブズの“聖域”ロッカールーム。
posted2018/07/26 07:00
text by
近藤篤Atsushi Kondo
photograph by
Atsushi Kondo
先々週の金曜日だった。ロシアW杯決勝を2日後に控え、世界はまだサッカーを中心に動いていた。その夜、サンウルブズはスーパーラグビー2018シーズン最後の試合をオーストラリア東岸の街ブリスベンで迎えた。
3年目のシーズン、ここまでの成績は3勝11敗。リーグに初参加した2016年は1勝、昨年は2勝、数字だけを見ればまるでガラパゴスゾウガメの前進だ。いや、ゾウガメの歩みの方がまだ速いかもしれない。
でも、勝利の内容は今シーズンに入って格段に良くなった。スクラムコーチを務める長谷川慎さんの言葉を借りればこうなる。
「去年までは、え? 勝ってもうた! みたいな勝利だったんですけど、今シーズンは、この試合は絶対に勝てるやろ、と思っていた試合は確実に勝てました。おまけに、今シーズンはどのチームもサンウルブズに対して一切手を抜いて来ない。そこはものすごく大きな差です。今週はいけるやろ、って毎試合信じて戦ってこられたシーズンでしたね」
消化試合という概念は存在しない。
それでも3勝12敗。1試合を残して、サンウルブズは所属するオーストラリア・カンファレンスの最下位に甘んじていた。そして最終戦の対戦相手レッズは、同カンファレンスの下から2番目だった。お互いにプレーオフ進出の可能性は、はるか以前に失っている。
シニカルに言えばこれはビリ争い、ただの消化試合にすぎない。しかしサンウルブズにも、レッズにも、そしてラグビーの世界にも、消化試合という概念は基本的に存在しない。
試合までの数日間、サンウルブズはブリスベンから車で1時間ほどのところにあるサンクチュアリー・コーブで合宿を張り、念入りに最後の準備を重ねていた。
あと1試合でシーズンは終わる。肉体と精神の疲労はほぼピークに達しているはずだ。でも誰も気を抜かず、誰もあきらめていなかった。
スクラム、ラインアウト、攻撃パターンの確認、ジムでのフィジカル、集中と笑顔と仲間への掛け声の絶えないトレーニングをサンウルブズは継続していた。そしてそんな彼らの姿を、僕は南半球の暖かな初冬の日差しの中で、この人たちって本当にタフだな、と感心しながら、グラウンドの周りで草を食むカンガルーと共に眺めていた(この国の田舎に行くと、本当にそこら中に野生のカンガルーがいるのだ)。