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ネイマールの演技はもう通用しない。
VAR制度はサッカーそのものを救う。 

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手嶋真彦

手嶋真彦Masahiko Tejima

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posted2018/07/19 11:30

ネイマールの演技はもう通用しない。VAR制度はサッカーそのものを救う。<Number Web> photograph by Getty Images

悪い意味で世界中の話題となってしまったネイマール。とはいえ26歳、改心して真のスーパースターとなれるか。

VARでの中断は作戦修正の時間にできる。

 今回のW杯でも指摘されたVAR制度のデメリットに、主審による映像レビューのための中断時間がある。試合の流れが変わりかねず、選手の集中力が切れかねないと言う。しかし、誤審を減らせるメリットが明らかになったのだとすれば、もはや後戻りするという選択肢はない。

 今後は中断時間が発生するという前提で、いかに適応していくかが問われるはずだ。例えばバスケットボールなどのタイムアウトのように、作戦や戦術を修正し、共有するための時間にもできるだろう。

ネイマールをあえて擁護するならば。

 VARの助言があり、いったん与えられたPKを取り消された選手のひとりがブラジル代表のネイマールだった。グループリーグのコスタリカ戦で判定が変わったその場面に限らず、今回のW杯ではプレーよりも“演技”で話題になった。

 過剰なまでに“のたうち回る”オーバーアクションは、実際にファウルがあったのか、なかったのかとは別の次元で、多くの観戦者をうんざりさせたようだ。ブラジル代表10番のそうした姿を真似た動画をSNS上にアップする「ネイマールチャレンジ」が一部で流行し、「劇団ネイマール」や「シミュレーション劇場」などと銘打って嘲笑する動画も出回っている。

 あえて擁護するなら、4年前のW杯でドイツに1-7の惨敗を喫したブラジルを復権に導かなければならないという重責を必要以上に背負い込んでいたのかもしれない。

 王国の汚名返上へ、必死になりすぎて、観戦者が鼻白むほどの過剰な演技を繰り返したと考えれば、アディショナルタイムの2ゴールでコスタリカを破った直後に流した涙にも説明がつく。安堵の涙だったのだろうが、いささか常軌を逸しているように映ったのは、まだグループリーグの2戦目だったからだ。

【次ページ】 “騙し合い”とシミュレーションは違う。

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