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ネイマールの演技はもう通用しない。
VAR制度はサッカーそのものを救う。 

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手嶋真彦

手嶋真彦Masahiko Tejima

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posted2018/07/19 11:30

ネイマールの演技はもう通用しない。VAR制度はサッカーそのものを救う。<Number Web> photograph by Getty Images

悪い意味で世界中の話題となってしまったネイマール。とはいえ26歳、改心して真のスーパースターとなれるか。

「権威」という見方自体を変えては?

 W杯には多くの誤審の歴史がある。それはそうだ。人は間違える。どれだけ気を付けても、ミスをゼロまで減らすのは難しい。不本意な誤審は、当事者となったレフェリーに傷を残しもするだろう。いつか傷が癒えればいいが、いつまでも癒えないままという悲劇も起こり得る。そうした悲劇もVARを活用すれば食い止められる。

 誤審の多くは判定の元となるインシデント自体を見逃すか、角度が悪いか距離が遠いかで肝心の場面をしっかり視認できず、かといってピッチ上ではプレーを巻き戻せないから起こってきたのだろう。VARの助けを借り、スロー再生やマルチアングルの映像を活用すれば、誤審回避の可能性は高くなる。誤審を減らしたほうが、レフェリーの尊厳は保たれるのではないだろうか。

 いっそのこと、レフェリーを「権威」とする見方自体を変えていくほうが良いのではないかとも思う。すべてのインシデントを完璧に把握し、ベストのアングルと距離で確認するのは物理的に不可能なのだ。

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 判定への不服を許さぬためにレフェリーを権威として祭り上げてきたのであれば、もはやその必要はないだろう。VARのシステムが整っていれば、重大な誤審の疑いがある判定は見直せる。テクノロジーによって覆されるのではなく、レフェリー自身の判断でジャッジを変更できるのだ。レフェリーは権威であり、たとえ誤審でも受け入れるべきというロジックは、少なくともW杯レベルのコンペティションではもう必要ない。

 VAR制度のせいで、レフェリングの技術が落ちるのではないかという懸念もあるようだ。杞憂にすぎないだろう。最終的にジャッジするのは人であり、技術を落としたレフェリーは自ずと淘汰されていくはずだ。

プレーをとめてしまった場合の課題。

 課題も見えてきた。一例を挙げれば準々決勝のイングランド戦で、スウェーデンのマルクス・ベリがオフサイドの判定を受けたシーンだ。副審が旗を上げ、主審が笛を吹き、プレーは止まった。

 しかし、映像で確認すると、ロングパスが出た瞬間のベリはぎりぎりハーフウェーラインの自陣側にいたようにも映る。だとすればオフサイドの対象外であり、主審が笛を吹いていなければ、ベリはDFラインの裏に抜け出していたので、そのままGKとの1対1に持ち込んでいたかもしれない。得点に関係しており、重大な誤審になりえた判定だろう。

 だが、レフェリーがプレーを止めてしまえば、もはや同じシーンは再現できない。VARの助言により判断差し戻しとなりかねないこうしたプレーは、できるだけ続行させたほうが誤審を減らせるだろう。

【次ページ】 VARでの中断は作戦修正の時間にできる。

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