ロシアW杯PRESSBACK NUMBER
ウルグアイが誇る最強2トップ。
スアレス&カバーニの奇跡と結末。
posted2018/07/09 11:20
text by
吉田治良Jiro Yoshida
photograph by
Getty Images
奇跡だと、つくづく思う。
なにしろ南米の小国ウルグアイの、それもサルトという人口10万人ほどの小さな街から、同じ年に、しかもわずか21日違いで、2人の世界的なストライカーが生まれたのだから。
ルイス・スアレスとエディンソン・カバーニ。
いまや「世界最強の2トップ」と謳われるウルグアイ代表の同級生コンビだが、似ているのは類まれな得点嗅覚と分厚い胸板くらいで、性格も、試合中の振る舞いもずいぶん違う。
その突き出た頬骨から意思の強さが伝わってくるカバーニは、ピッチ上ではまさしく“ガーラ・チャルーア(=不屈のウルグアイ人魂)”を体現するグラディエーターのような闘士だが、普段は物静かで謙虚な性格で知られる。
献身的なカバーニ、散歩するスアレス。
一方、ほんの少しだけ先輩のスアレスは、いかにもやんちゃ坊主の雰囲気。垂れ目でビーバーのような前歯が可愛らしい印象も与えるものの、その前歯で本当に相手選手に噛みつき、これまで確認できるだけでも3人の犠牲者を出すなど、ときに狂気をにじませる。
もちろん、代表チームにおける戦術的な役割の違いもあるのだが、カバーニがボールのラインより後ろに下がって守備も献身的にこなすのに対して、スアレスは大半の時間を犬の散歩でもするように歩きながら、ひたすらゴールを奪うことに専念する。
笑ってしまったのは、ポルトガルとの決勝トーナメント1回戦だ。中央から右サイドのスペースに走り込み、ゴールライン際でボールを引き出したスアレスが、その動きだけで疲れ切ってしまったのか、膝に手を当てて休んでいる。
終了間際のワンプレーではない。まだ前半の35分にもなっていない時間帯の出来事だ。