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「ベルギーの力は圧倒的、完璧」
トルシエすらフランス不利と予想。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2018/07/08 13:00
アザール、ルカクらワールドクラスが協調性をもってプレーする。ベルギーのチーム力には世界が感嘆している。
デシャンのイメージを体現している。
――ベスト4に進んだものの、1998年や2006年のチームのような強さはない、ということですね。
「'98年のチームにはパーソナリティーがあった。確立された個とフィジカル、ディシプリン、テクニックが融合したチームだった。しっかりと自分たちのプレーができていて、今のチームとは比較するべくもない。
とはいえこのチームも、デシャン監督が厳格さを植えつけることに成功した。(現役時代の)デシャンのイメージを体現しているチームだ。労をいとわない守備と徹底したディシプリン……」
――まさに彼のイメージそのものです。
「今のところそれが成功している。これから先はわからないが。
しかしフランスは、今大会で南米のチームを退けて勝ちあがってきた。ペルーに勝ちアルゼンチンに勝ちウルグアイに勝った。次はブラジルだろうか……。まるでコパアメリカだ(笑)」
――まったくその通りで、スタンドの観客も南米の人たちが圧倒的に多いです。
「だからワールドカップではなくてコパアメリカだ。信じられないが」
――第2試合のあとまた話しましょう。フランスの相手が決まった段階で、どんなことが考えられるか議論しましょう。
個とコレクティブを融合したベルギー。
そして以下は、ブラジル対ベルギー戦後の会話である。
――凄い試合でしたね。
「驚きはない。サッカーとはこういうものだからだ。素晴らしいチームのサッカーだった。
まさに完璧といえた。守備が素晴らしく、攻撃も鋭かった。セットプレーを存分に活用した。プレーとはまさにこうで、それはフランスに欠けるものだ。
しっかりと守ってジルーの空中戦で流れの変化を待つ。グリーズマンのテクニックと創造力、ムバッペのハイパー高速テクニックが違いを作り出し、流れを変えることを。それ以外のプレー理念はフランスにはない。
ベルギーは違う。プレーを作り出したのはチームであり、組織的な力や戦術だった。守備もつまらないミスはひとつもない。ルカクとエデン・アザールを前線に置いたのは、チャンスを逃さずにゴールを決めたいという狙いの現れだった。たしかな戦術と戦略がそこにはあった。
また選手も、個の能力をコレクティブに発揮した。チームのために彼らはプレーし、監督の指示を忠実に守った。監督は最善のシステムを考え、選手は全力でそれを実現しようとした。これほどのチームはなかなか見られるものではない。
アザールは本当に素晴らしかった。フェライニやルカクもそうだ。チームはとてもバランスが取れていた。ブラジルはボールを保持し、ゲームを支配したが、すべては個人頼りだった。組織力を欠き、チームとして機能することができなかった」