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「ベルギーの力は圧倒的、完璧」
トルシエすらフランス不利と予想。
posted2018/07/08 13:00
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph by
Getty Images
もっと簡単なインタビューになるだろうと、当初は考えていた。フランスが勝ちあがったらその理由と、次の準決勝ブラジル戦に向けての展望をそれぞれの試合の後に聞く。だが、ウルグアイ戦でのフランスの低調なパフォーマンスと、ブラジル戦でベルギーの起こしたサプライズが状況を複雑にした。
グアダラハラ(プラティニのフランスとジーコのブラジルが相まみえた'86年ワールドカップ準々決勝。ワールドカップ史上最高の名勝負とも言われている)のような叙事詩的な余韻はないが、史上屈指の名勝負であることは間違いない。それほどベルギーが与えた印象は強烈だった。
ここに掲載するのは、7月6日におこなわれた、フィリップ・トルシエとの2度の電話インタビューのほぼ全文である。まずはフランス対ウルグアイ戦後だ。
フランスは規律にあふれていた。
――比較的静かな試合になりました。
「驚きはなかった。今日もまたセットプレーが大きな意味を持った。フリーキックの重要性も変わらずで、ゴールキーパーのミスも試合に大きな影響を与えた。
フランスは希望を抱き続けることができた。その攻撃力で、優勝候補としての力を証明することもできた」
――そうではありますが……。
「ロリスの素晴らしいセーブが何度もあった。彼がひとつでもミスをしていたら、試合の様相はまったく異なっていただろう。
ただ、ウルグアイがそれほど怖い存在でなかったのもまた事実だ。ウルグアイが守りを固めて厳しい試合になると予想したが、先制点の後はフランスがゲームを支配した。ゲームを鎮静化し、危険に晒される状況を作りださなかった。パニックも危機もない、抑制の効いた平穏な試合だった。
つまりごく平凡な試合で、個のレベルでもコレクティブな面からもビッグゲームとはいえなかった。とはいえフランスが規律にあふれ、厳格にプレーしたのも事実だった。守備的なシステムを採用し、トリソをマテュイディに代えて起用した。トリソは守備の強さをよく発揮した。
守備をベースに考え、攻撃は個の力に頼ったが、今日はグリーズマンもムバッペもごく平凡だった。個の力で違いを作り出せるふたりがそうだった。
決勝に向けてさらに重要な試合(準決勝)が控えている。普通に考えれば相手はブラジルだ。しかしベルギーが出てきても、難しい試合になるのは間違いない。
見方を変えれば準々決勝のフランスは素晴らしかった。完全にゲームを支配してウルグアイに付け入る隙を与えなかった。心理的にいい状態でフランスはブラジル戦に臨める。そしてフランスにとって、ブラジルを破るのは願望ではない」