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オジュウチョウサンと武豊の大挑戦。
史上初、障害と平地の両GI制覇を。
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byAFLO
posted2018/07/06 07:00
4月の中山グランドジャンプも制したオジュウチョウサン。障害の絶対王者が平地でも……と期待せずにはいられない。
メジロパーマーは障害経験後にGI制覇。
平地GIを勝ってから障害レースを勝ったのは、コガネタイフウ('89年阪神3歳ステークス)、ブゼンキャンドル('99年秋華賞)、ウインクリューガー('03年NHKマイルカップ)、ビッグウィーク('10年菊花賞)の4頭で、みな障害では1勝しただけ。
逆に、障害レースを経験してから平地のGIを勝った馬は1頭しかいない。'91年に障害で2戦して1勝し、'92年の宝塚記念と有馬記念を勝ったメジロパーマーである。
'05年から'07年まで中山グランドジャンプを3連覇したオーストラリアのカラジも「二刀流」の使い手で、平地でのGI勝利こそなかったが、'00年のアデレードカップ2着、'01年のメルボルンカップで4着になるなど、長距離戦で強かった。
オジュウチョウサンは、かつてどの馬もなし得なかった、平地と障害両方でのGI制覇という「究極の二刀流」を目指しているわけだ。
キタサンブラックのような先行策か。
オジュウチョウサンの全兄ケイアイチョウサンは、'13年の京成杯3着、ラジオNIKKEI賞優勝、菊花賞と翌'14年の金杯で5着になるなど、平地で活躍した。血統的にはドンと来い、だ。
不振に陥った馬が障害練習をしてトモを鍛え、平地で復活した例も少なくない。障害でも平地でも「競馬」であることに変わりはないのだ。
確かに、障害レースの平均ラップは1ハロン13秒台半ばで、平地の長距離では12秒台だから、1秒ほど速くなる。が、馬というのは、レースの流れのなかで走るので、周囲が速くなれば苦しむことなく自分もペースを上げることができる。ジャパンカップに来たヨーロッパの馬が、持ちタイムを10秒以上縮めることも珍しくない。
開成山特別で、武はオジュウチョウサンをどのようにエスコートするだろうか。
先行して押し切る競馬で勝ちつづけてきた馬だ。21戦ぶりの平地で、後方から最後の瞬発力に賭けるような競馬はしないだろう。
ということは、武が主戦をつとめたキタサンブラックのように、ある程度流れをリードして突き放す競馬をするのか。