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ドイツについに新リーダーが誕生。
クロースが“ゲルマン魂”を甦らせた。
 

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遠藤孝輔

遠藤孝輔Kosuke Endo

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posted2018/06/26 11:00

ドイツについに新リーダーが誕生。クロースが“ゲルマン魂”を甦らせた。<Number Web> photograph by Getty Images

劇的な直接FKが決まった直後のトニ・クロース。敗退危機を逃れた安堵感と歓喜が入り混じった表情だった。

逆転勝利は2013年以来なかった。

 そのハートの強さこそ、ブラジルワールドカップを制した後のドイツに欠けていたものだろう。なにしろ最後に逆転勝利を収めたのは、2013年10月(その時の相手もスウェーデン)である。

 先制点を奪われても動じずにボールを支配できるが、肝心の相手ゴール前での迫力や執念が足りない。いかなる劣勢でも声を嗄らし、自身のプレーで戦況をひっくり返すようなリーダーの不在も痛かった。華麗なテクニックやパスワークを得た代わりに、ドイツは強靭なメンタリティという伝統的な強みを失った印象だった。

 それでも若手主体で臨んだコンフェデレーションズカップで優勝し、圧倒的な強さで今大会の予選を勝ち抜いたため、そうした負の側面はほとんどクローズアップされなかった。しかし、ワールドカップの舞台は甘くない。

戦術上のキーマンから絶対的リーダーに。

 メキシコにリードを許し、決定機を作り出せないまま敗れたチームは、勝利に対する執着心をピッチ上のプレーで示せなかった。それを象徴したのがデュエルの勝率だ。小柄な選手が多いメキシコに遅れをとったのである。ツヴァイカンプ(1対1)の美徳さえなくしてしまったわけだ。

 こうした流れの中で掴んだスウェーデン戦での逆転勝利には、間違いなく勝点3以上の価値がある。勝利への執念と粘り強さを取り戻しただけではない。戦術上のキーマンに過ぎなかったクロースが、絶対的リーダーへと進化を遂げたのだ。

 ブラジルワールドカップで母国の世界制覇に、その後の4年間でレアル・マドリーのチャンピオンズリーグ3連覇に貢献した司令塔は、いまやローター・マテウスやミヒャエル・バラック、バスティアン・シュバインシュタイガーら、歴代主将に匹敵する影響力を持っている。

【次ページ】 ノイアーが格の違いを見せた正GK問題。

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