ドイツサッカーの裏の裏……って表だ!BACK NUMBER
ドイツについに新リーダーが誕生。
クロースが“ゲルマン魂”を甦らせた。
posted2018/06/26 11:00
text by
遠藤孝輔Kosuke Endo
photograph by
Getty Images
ドイツ代表が奇跡的に息を吹き返した。
ロシアワールドカップの初戦でメキシコに不覚をとるも、続くスウェーデン戦で2-1の逆転勝利。負ければグループリーグ敗退、引き分けでも自力での16強入りが不可能になる大一番で、試合時間が残り1分を切ったタイミングに劇的な決勝ゴールを挙げ、決勝トーナメント進出に望みをつないだのだ。
ブラジルと並ぶ優勝候補の筆頭に挙げられていたとはいえ、大会前のドイツを取り巻く空気はポジティブではなかった。今年3月、ブラジルとのフレンドリーマッチで0-1というスコア以上の完敗を喫した後、トニ・クロースは公然とチームメイトを批判した。覇気のなかった若手の奮起を促す叱咤にも聞こえたが、メディアを介して伝えたやり方には賛否両論があり、ともすればチームの結束に亀裂が生じかねなかった。
ミスパスから失点、劇的な直接FK。
そのクロースがスウェーデン戦で魅せた。
後半のアディショナルタイム、FKのチャンスでボールを横にずらすと、世界最高クラスのクオリティを誇る右足を一閃。美しさも、鋭さも兼ね備えた弾道がネットに突き刺さる。82分のジェローム・ボアテンク退場で10人になりながら、果敢に勝利を求めて攻め続けるも、どうしてもネットを揺らせなかったドイツに値千金の決勝点をもたらしたのだ。
前半に自身のミスから相手に先制点を奪われていた司令塔は、まさに一振りで戦犯から救世主へと変貌を遂げた。
試合後、クロースはドイツ公共放送『ARD』のインタビューでこう口にしている。
「もちろん、失点は僕の責任だ。疑うまでもないよ。あれだけ多くのパスを出していれば、1つや2つのミスは起こるもの。それが失点に繋がってしまうなんて最悪さ。それでも強い気持ちを持たなければならないし、そういう気持ちで後半を戦ったんだ」