野球のぼせもんBACK NUMBER
巨人、日ハム、SBと渡った仕事人。
捕手市川友也はなぜ重宝されるか。
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKyodo News
posted2018/06/20 10:30
2016年、大谷翔平がプロ野球最速の165キロを出したときにマスクをかぶっていたのが市川だった。
調子が悪い球、内角の使い方に経験が滲む。
市川は5月1日に出場選手登録をされて以来、助っ人右腕のバンデンハークやベテラン投手が先発する試合を中心に、スタメンで起用される機会を得ている。
件の巨人戦は、攝津正が先発だった。初回に連続四球を与えるなど苦戦の立ち上がりだったが、6回途中2失点の投球で今季2勝目をマークした。
試合後、攝津は市川の粘りのリードに感謝を述べた。
「自分の中であまり良くない球があったけど、市川はその球を敢えて何度も要求してきた。投げているうちに修正ができたのが大きかった」
吉鶴コーチも、市川の勇気のリードを称賛した。
「調子が悪いからといって投げさせる選択肢から外してしまえば、もちろん相手打者に的を絞りやすくさせます。かといって、その球を打たれれば捕手も後悔するんです。若い捕手にはいつも口酸っぱく言うけどなかなかできない。やはり経験があるなと感じました。
また、彼は内角球の使い方が上手い。日ハムはスライダーやカット系を投げる投手が多いので、それを生かすためのリードを常に考えていたからでしょう。今のホークスでは一番じゃないかな」
甲斐、高谷、市川の三本の矢。
伸び盛りの甲斐、兄貴分というより「お父さん的存在」の高谷、そして市川。三者三様の特徴があって楽しみだし、頼もしいと吉鶴コーチは笑顔を浮かべる。
今年のホークス捕手陣は、束ねると簡単には折れない「三本の矢」となった。
ところで、交流戦では“4連覇”を逃したものの、セ・リーグ相手に11勝7敗と勝ち越し、ペナントレースでも貯金を作った状態で戦いを進めている。今シーズンはかなりの混戦模様。野手は内川聖一、長谷川勇也が一軍に昇格したことでかなり厚みが出てきた。これから先、後半戦になるかもしれないが、ブルペン陣に岩嵜翔やスアレスが帰ってくれば一気に戦力は整う。まずはオールスターまで勝率5割以上で粘れるか、大きなポイントになりそうだ。