スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
スペインもポルトガルもまずは満足?
3-3のドローは超絶個人技の応酬。
posted2018/06/16 12:00
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
負けなかったことを良しとするか、勝ちを逃したと悔やむか。
スペインにとっては評価が難しい結果となったが、ここに至るまでの過程を考えればポジティブな要素の方が多い勝点1だったのではないか。
レアル・マドリーがフレン・ロペテギの新監督就任を公表したのは、ワールドカップ初戦を3日後に控えた6月12日。翌日昼にはスペインフットボール協会(RFEF)のルイス・ルビアレス会長が緊急会見を開き、ロペテギの解任を発表した。
その日の午後にはRFEFのスポーツディレクターを務めていたフェルナンド・イエロの新監督就任が決定。レアル・マドリーと代表で長年キャプテンを務めた闘将は、2部オビエドを1シーズン率いただけの監督経験と僅か2回のトレーニングのみで、欧州王者ポルトガルとの大一番に臨むことになった。
最悪のスタート、しかし……。
前代未聞のスクランブル体制で迎えたスペインの初陣は、ここ数日の混乱を反映するように最悪の形でスタートした。
開始早々、ペペからのロングフィードをブルーノ・フェルナンデスが頭で後方に落とし、これを受けたクリスティアーノ・ロナウドが縦への突破を仕掛ける。とっさに足を出したナチョと接触したクリスティアーノが倒れると、ジャンルカ・ロッキ主審は迷わずペナルティスポットを指差した。
4分、このPKをC・ロナウドが冷静に決めてポルトガルが先制。その後もスペインは相手の厳しい球際の寄せに手こずり、ボールを失うたびに危険なカウンターにさらされる。17分には代えのきかない存在であるセルヒオ・ブスケッツが警告を受け、守備面で無理ができなくなった。
攻守に後手を踏む苦しい状況下、形勢を覆す原動力となったのは意外な顔ぶれが生み出した、意外な形でのゴールだった。