スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
スペインもポルトガルもまずは満足?
3-3のドローは超絶個人技の応酬。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2018/06/16 12:00
ロナウドの3得点は鮮烈だったが、緊急事態でも勝ち点1を得るスペインの成熟度の高さも印象的だった。
監督としての初采配も実にロジカル。
新監督の初采配は上々だった。
「2年かけて作ってきたチームを2日間で変えることはできない」
就任会見で語った通り、イエロはロペテギ体制下で準備していたメンバーをそのまま採用した。
試合中は、まず70分、動きの重かったイニエスタをチアゴに代え、続いて疲れの見えたD・コスタを下げてイアゴ・アスパスを投入。3人目はシルバからルーカス・バスケスの交代で右サイドの守備を強化するという、ロジカルで的確な選手交代を見せた。
最高の滑り出しとはいかなかったが、最悪の状況は避けることができた。それは前代未聞の緊急事態が生じたばかりのスペインにとって、イエロの言う通り重要な第一歩だったと言える。
ポルトガルの堅守速攻はやはり強烈だ。
一方、ポルトガルにとっては好調ぶりを裏付ける一戦となった。
ロングボールを多用した攻撃で相手の守備ラインの押し上げを阻み、守っては低めのラインでコンパクトな陣形を保ちながら、ボールホルダーには厳しく寄せていく。C・ロナウドの巧みなポストプレーを起点とした速攻も含め、攻守にスペインの弱みを突こうという狙いがはっきりと見て取れた。
一度リードを奪われ、堅守速攻に徹することができなくなると攻め手がなくなる弱点はあるものの、頼れるエースがこの日のように少ないチャンスを確実に決めるようであれば、どのチームにとっても厄介な相手となるだろう。
2強の直接対決がドローに終わったことで、グループBの首位争いは分からなくなってきた。
両者の次戦は6月20日。スペインはカザンでイラン、ポルトガルはモスクワでモロッコと、首位通過を懸けたグループリーグ第2戦を迎える。