スペインサッカー、美学と不条理BACK NUMBER
スペインもポルトガルもまずは満足?
3-3のドローは超絶個人技の応酬。
text by
工藤拓Taku Kudo
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2018/06/16 12:00
ロナウドの3得点は鮮烈だったが、緊急事態でも勝ち点1を得るスペインの成熟度の高さも印象的だった。
コスタ、ナチョの圧巻の個人技。
まずは24分、不調による先発メンバー落ちも囁かれていたジエゴ・コスタが、圧巻の個人技を披露する。
前線でブスケッツからのロングパスをキープし、左に1回、右に1回切り返してジョゼ・フォンテを翻弄。最後は右足をコンパクトに振り抜き、地を這うシュートをゴール左隅に突き刺した。
44分にはダビド・デヘアがC・ロナウドのシュートをキャッチし損ねる痛恨のミスで勝ち越されるが、スペインのリアクションははやかった。
55分、イニエスタが得た敵陣中央からのFK。ダビド・シルバがゴール右に送ったボールをブスケッツが頭で中へ折り返すと、走り込んだD・コスタが押し込んでスコアを振り出しに戻した。
さらに3分後にはペナルティエリア手前にこぼれたクリアボールをナチョが右足ボレーで捉え、左ポストの内側を強打するスーパーゴールを叩き込んだ。
イエロ「劣勢時も自分たちを信じて疑わなかった」
結局、試合は88分、C・ロナウドにハットトリックとなる直接FKを決められて3-3で終了。このFKを与えたジェラール・ピケのファウルは避けられたものだっただけに、最終的には悔やまれるドローという印象が残った。
いずれも避けられた形だったうえ、立ち上がりと前後半の終了間際という気をつけるべき時間帯の失点だった。詰めの甘さが目立つ試合だったことは事実である。
それでも、一度ならず二度のビハインドを覆したことは評価すべきだろう。
2日前の監督交代、開始早々のPK献上、デヘアの致命的ミス。度重なる逆境に直面しながらも、選手たちの心は折れなかった。
「我々は重要な一歩を踏み出した。チームはよく戦い、いくつもの困難を乗り越えた。劣勢時も自分たちを信じて疑わなかった。それこそあらゆる状況下で重要になってくる」
初陣を終えたイエロは、そう言って選手たちをねぎらった。