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イングランドはプレミアの二線級?
若い力でW杯8強なら上出来か。
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2018/06/17 17:00
イングランドの将来を担うデル・アリ(右)とダイアー。今回のW杯は長期的スパンを見据えた上での戦いとなる。
プレミアにとどまりがちな選手たち。
また、元イングランド代表監督のファビオ・カペッロは、次のように指摘した。
「イングランドの選手たちは現状に満足しすぎている。海外のリーグにチャレンジすべきだ」
シャビ・アロンソはレアル・ソシエダからリバプールに移籍し、みずからのステージを上げた。クリスティアーノ・ロナウドはマンチェスター・ユナイテッドに満足せず、マドリーに新たな刺激を求めた。
そしてジャンルイジ・ブッフォンは、40歳でパリ・サンジェルマンにチャレンジしようとしている。彼らに比べると、イングランドの選手たちはプレミアリーグ内に留まる傾向が強い。
'80年代後期にギャリー・リネカーがバルセロナへ、'90年代前期にはポール・ガスコインがラツィオにわたったが、ともに成功したとはいえず、近年は海外のリーグで腕を試す選手がほとんどいなくなった。
無理もない。プレミアリーグは高額のギャランティを保証されているのだから、右も左も分からず、言葉も通じない他国を選択するのは無謀とも考えられる。
カペッロ時代は一体感を失っていた。
もちろん、チャレンジ精神は必要で、厳しい環境が人を成長させる例も枚挙にいとまがない。とはいえ、ビッグマネーを求めることもプロとして当然の選択だ。したがって、カペッロの指摘はデルボスケほどの精度はない。
いや、カペッロが率いていた当時も、自他ともに有能な戦略家と認め、指揮官として十分な経験を有するこの男でさえ、戦略・戦術を徹底できなかった。
チームがユナイテッド、リバプール、チェルシーの三派に分かれ、なおかつカペッロが課した軍隊のような厳しい規律に多くの選手が反発した結果、組織に必要な一体感が失われた。身勝手なプレーも散見するようにもなっていった。勝てるはずがない。