JリーグPRESSBACK NUMBER
大島僚太に「自分の全てを教えた」
憲剛流ゲームコントロールの極意。
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byTakuya Sugiyama
posted2018/06/14 07:00
W杯を前に、期待度が大きく上がっている大島僚太。その成長は中村憲剛という最高のお手本が間近にいたからこそだ。
行き詰まったタイミングでヒントを。
「相手が今、どうしたいのか。とにかく、そこに敏感になれ」
そのことを何度も大島に説いたと中村は言う。
「相手がどういうシステムで、こっちをハメに来ようとしているのか。そうしたら、どこが空くのか。ボランチが、そこを一番敏感に察知しなくてはいけない。相手の一番嫌なところを突くように味方を先導するのがボランチの仕事。相手が一番隠したいところを引き出されるわけで、そういうのをプレーで見せることが、怖さにもつながる。それをプレーで見せたりとか、話しながらとかしてましたね」
自分のやりたいことをやるのではなく、相手の出方を見て、その弱点を突いていく。その柔軟性を植え続けていたのである。
とはいえ中村も、手取り足取りで大島にレクチャーし続けていたわけではない。大島が行き詰まっているのではないかと感じ取ったタイミングで、その壁を越えるヒントを中村が伝えるというのが、2人の関係性だった。大島も熱心にアドバイスを求めるタイプではないが、いざというときに伝える言葉に真剣に聞き入る姿に、中村も助言を惜しまなかった。
「モノはあったからね。もちろん、そこから先で伸びていくかどうかわからない。でもユウ(小林悠)もリョウタもそうだけど、素直だった。耳を傾けて、自分のものにしていける。そこで、もし『僕は、そうじゃないです』とか『僕、もう大丈夫です』と言われていたら、自分も話はしなかったと思う」
昨年、久しぶりにアドバイスした。
近年は助言する機会もめっきりと減っていたが、あるとき、「久しぶりに(大島に)アドバイスをしたよ」と中村が明かしてくれたことがあった。
それは去年の3月、完敗を喫したリーグ第4節・FC東京戦(0-3)の後のことだ。
狭い中央の密集地帯でもボールを扱える技術と機動力を持つ大島だが、それゆえに、対戦相手は、より徹底したマークで止めてくるようにもなっていた。このFC東京戦でも激しい圧力を中央で受け続け、マッチアップした橋本拳人にはファウルも辞さない覚悟でプレーを止められた。警告を受けた橋本は後半途中でベンチに下がったが、代わって入った田邉草民もハードマークを続ける徹底ぶりで、大島のユニフォームが破れてしまうほどだった。