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2400人が目撃。ボルダリングW杯で
“チームJAPAN”が起こしたドラマ。

posted2018/06/15 11:00

 
2400人が目撃。ボルダリングW杯で“チームJAPAN”が起こしたドラマ。<Number Web> photograph by Atsushi Hashimoto

女子優勝の野口啓代(右)と準優勝の野中生萌。

text by

津金壱郎

津金壱郎Ichiro Tsugane

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photograph by

Atsushi Hashimoto

 悲願を達成した歓喜の涙があふれると、2400人を超える来場者の万雷の拍手に包まれた。ボルダリング・ワールドカップ第5戦の八王子大会(6月2日・3日)は、男女ともに決勝戦でドラマティックなエンディングが待っていた。

 女子決勝は3課題目を終えた時点で、優勝争いは2完登の3選手に絞られた。完登に要したアテンプト差で1位が野口啓代(29歳)、2位に野中生萌(21歳)、3位にエカテリーナ・カプリノワ(28歳・ロシア)の順で最終課題を迎えた。

 3選手のなかでカプリノワが最初に脱落。ゾーンに到達できずに競技時間の4分間を終えると、ここから日本が誇る野口啓代と野中生萌の最強ツートップが格の違いを見せつけた。

 ファイナリスト3番手でステージに現れた野中は、抜群の集中力を発揮して1度目のアテンプトであっさりとゾーンを獲得すると、そのまま完登に持ち込んだ。TOPホールドから飛び降りると両手でつくったガッツポーズを何度も振り下ろして全身で喜びを爆発させた。

 野中の完登によって優勝へのハードルが最大限に高まったなか、野口が女子決勝のトリで登場する。これまで数多くの痺れる局面を乗り越えてW杯通算20勝をマークしてきた野口は、見事に自国開催優勝のプレッシャーを跳ね返して完登を決める。

「この瞬間をずっと待ち望んできたけど、まだ信じられない。大きな歓声をもらったおかげで登れたと思います。今年こそ自国開催で優勝したいと思っていたし、勝ちたい大会で勝てた」

 昨年は2位に終わった悔しさを晴らし、喜びを弾けさせると頬を歓喜の涙が伝った。

 2016年シーズンから、この八王子大会までのボルダリングW杯で、野口が決勝に進出したのは出場19大会中15回(7割8分9厘)。野中に至っては出場20大会中17回の8割5分という驚異の成績を残している。大舞台の経験値で他を圧倒する両選手が異次元のパフォーマンスで来場者を沸かせた一方、新鋭もしっかりと足跡を残した。

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