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2400人が目撃。ボルダリングW杯で
“チームJAPAN”が起こしたドラマ。 

text by

津金壱郎

津金壱郎Ichiro Tsugane

PROFILE

photograph byAtsushi Hashimoto

posted2018/06/15 11:00

2400人が目撃。ボルダリングW杯で“チームJAPAN”が起こしたドラマ。<Number Web> photograph by Atsushi Hashimoto

女子優勝の野口啓代(右)と準優勝の野中生萌。

わけ隔てなく選手を応援する雰囲気。

 八王子大会を振り返ると、MVPに相応しかったのは2400人を超す来場者と言っても過言ではないだろう。準決勝の競技が始まる朝9時の時点で客席の7~8割が埋まり、日本人選手にも外国人選手にもわけ隔てなく「ガンバ! ガンバ!」の声援が飛ぶ。決勝では2階席もほぼ埋まり、さらに熱く大きな声援と盛大な拍手で選手のパフォーマンスを後押しした。

 ボルダリングW杯で一昨年の加須大会、昨年の八王子大会を知る者には、単に来場者数が増えただけではなく、観戦クオリティーが格段に向上していたのが印象的であった。来場者によってつくられた会場の雰囲気と、選手たちのパフォーマンスが高次元でシンクロしたからこそ、今回の熱戦が生まれた。

   惜しむらくは大会初日の観客席がもう少し埋まってほしかったと思う。トップクライマーをのぞけば、多くの選手は20名のみが進める準決勝ラウンドを目指している。折れそうな心を奮い立たせながら予選課題に取り組む彼らに、満員の来場者から大きな声援が飛ぶ。そんな光景は世界的に見てもないだけに、世界に先んじて日本の来場者がその“初登者”になるのを期待してやまない。

 来年は八王子でスポーツクライミングとパラクライミングの『世界選手権』が開催される。ボルダリングだけではなく、リードやスピードの各種目のトップクライマーと、パラクライミングのアスリートが世界中から集まってくる。

 ボルダリングは国際大会のW杯でも、国内大会のジャパンカップでも、『Do』とは異なる『観戦』ならではの楽しみ方が広がり、来場者数も伸びている。この勢いを単なるブームに終わらせず、他種目にも繋げながら、真の意味でこの国の文化にスポーツクライミングが根付くことを心待ちにしている。

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