オリンピックへの道BACK NUMBER
ドーピング問題でクリーンだった日本。
近年、違反者が増えている背景は……。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKyodo News
posted2018/06/03 17:00
ドーピング陽性反応を示し、会見に臨んだ古賀淳也。2020年東京五輪を前に、対策の徹底が求められる。
サプリメント利用での落とし穴。
もう1つは、多くの選手がサプリメントを利用するようになっていることだ。
そこに落とし穴がある。サプリメントにはさまざまな成分が含まれている。大手メーカーによる製品、特にスポーツ界とつながりの深い企業であれば、どのような成分が問題になるかは把握しているし、選手に提供する際も、さまざまな知識をレクチャーするなど手厚いサポートをしている。
ただ、すべての選手がそれほどの手厚いサポートを受けているわけではなく、中には自分なりに勉強して取り入れている選手もいる。
先にあげた例の中には、競技レベルが伸び悩んでいることをきっかけにインターネットなどで調べて、サプリメントを摂取するようになった選手もいる。安価であったことも当該の製品を選んだ理由としている。
「見よう見まね」で始めるケースも。
しかしインターネット上で公表されている情報がすべて正しいわけではないし、大丈夫とされている製品でも、製造過程の問題から品質にばらつきがあり、禁止薬物が混入してしまっていたケースも報告されている。
サプリメントを取り入れたきっかけとして、「○○さんが利用しているから、自分も摂取するようになりました」と語る選手もいた。特段、深く学んでのことではなく、「見よう見まね」で始めたと言っていいかもしれない。
いずれの場合でも、専門家からの強いバックアップがない環境であることでは共通している。それでも競技力を向上させたい、そのためにサプリメントも使ってみたいという心理は理解できないわけではない。
だが、違反となったときの代償は大きい。