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ドーピング問題でクリーンだった日本。
近年、違反者が増えている背景は……。

posted2018/06/03 17:00

 
ドーピング問題でクリーンだった日本。近年、違反者が増えている背景は……。<Number Web> photograph by Kyodo News

ドーピング陽性反応を示し、会見に臨んだ古賀淳也。2020年東京五輪を前に、対策の徹底が求められる。

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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 オリンピックでドーピング違反ゼロ。

 それは日本の誇るべき点として、しばしばクローズアップされてきた。

 しかし最近、五輪競技で、ドーピングのルールに抵触する日本人選手が目立ってきている。

 2016年の試合で自転車の男子、2017年の試合では競泳男子、レスリング男子、フェンシング女子の選手が、それぞれドーピング違反とされた。

 今年2月の平昌五輪ではスピードスケート・ショートトラック男子の斎藤慧選手が、そして5月には、2009年の世界選手権男子100m背泳ぎで金メダルを獲得し、リオ五輪にも出場した競泳の古賀淳也選手もドーピング検査で陽性反応を示していたことが発表された。

 ドーピングと言えば、昨年9月、カヌーの日本代表候補選手がライバル選手の飲み物に禁止薬物を混入させたという事件もあったが、先にあげた選手たちは、その後の調査により、故意ではなく過失であったことが判明している。あるいはまだ結論が出ていない選手も故意ではなかったことを主張しており、検出された成分量などの状況から、主張の通りだと考えられる。

毎年のように変更される禁止薬物リスト。

 過失であるにしても、なぜ規則に抵触する選手が相次いでいるのか。そこには2つの理由がある。

 1999年に世界アンチ・ドーピング機構が設立され、2004年にアンチ・ドーピング規程が発効。以降、ルールをかいくぐろうとする選手やその周辺の協力者が現れ、そのたびにさらに規則や検査が厳しくなる、という流れが続いてきた。

 禁止薬物のリストは毎年のように変更され、知識は容易に追いつかない。前年は大丈夫だったものが、年が変わると禁止されていたということもある。選手個人が把握しきれるレベルではないし、「一般の医師では、どれがドーピングの規則に引っかかるのか、すぐに判断がつかないのではないでしょうか」と言う競技関係者もいる。

 選手のみならず、周囲も含め、相当の注意を払わなければならないところまで専門化しているのが違反者が増える理由としてあげられる。

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