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オリ1年目、田嶋大樹はなぜ勝てる?
「鈍感だと長くはやっていけない」
posted2018/05/31 11:15
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Kyodo News
「壁はないですね。だって、自分がどうにかなれば、どうにかなるんで」
ルーキーの田嶋大樹に「プロに入って感じた壁は?」と聞くと、こんな答えが返ってきた。
21歳のドラフト1位左腕は、その言葉通りの活躍を見せている。
5月29日現在、先発で8試合に登板し5勝2敗、防御率は3.09。最大6あった借金を返済し上昇気流に乗ってきたオリックスの中で、6勝のアンドリュー・アルバースに次ぐ勝ち頭となっている。開幕前、1年目の目標として二桁勝利と新人王を挙げていたが、目標達成の可能性が早くも膨らんできた。
結果を出し続けられるのは、修正能力の高さゆえだ。
2度目の登板となった4月7日の埼玉西武戦で4回途中に6失点で降板した以外は、きっちりと試合を作り続けている。立ち上がりが良くなくても、試合の中で、その日の自分の状態に合わせて体の使い方を微調整していき、回を追うごとにピタリとはまり、躍動感が生まれていく。
たとえその試合中に問題を解決しきれなくても、1週間後の登板までには修正するため、2度同じ間違いは繰り返さない。
練習法を片っ端から試して調整する。
例えば、5月13日の東北楽天戦。田嶋は5回3失点で2敗目を喫し、試合後に「今日は体から手が出るまでのリズムが合わなくて、ボールに力が伝わらなかった。疲労がたまって、体の重心が違ってきている。何とかいい状態に戻したい」と語っていた。
そして1週間後、田嶋は見事に再生した。自己最速の153キロを記録しキレも増したストレートを軸に、西武打線を7回無失点に抑え、5勝目を挙げた。
その1週間の調整について、田嶋はこう明かした。
「楽天戦は体がだるくて全然投げられなかったので、とりあえず片っ端からやるかーと思って、まずウエイトトレーニングをやりました。普段は自体重のトレーニングが多くてウエイトトレーニングはあまりやらないんですけど、あの時は筋肉に刺激を入れるという感覚でウエイトをしっかりやったら、体がバシッと決まって、だるさがちょっと消えたので、『これいけるわー』と。
それでも西武戦の2日前の立ち投げでは球があまりいかなかったので、いろいろと考えて試行錯誤しました。例えば足の使い方だけでも何パターンもありますよね。足を上げてケツからいく人もいれば、二段みたいにいく人もいるし、軸足の内側に体重をかけていく人もいれば、ちょっと外にかける人もいる。
それを片っ端からやっていったらはまった形があって、ストレートがいくようになったので、『これだ』と思って、いいうちにやめておきました」