猛牛のささやきBACK NUMBER
オリ1年目、田嶋大樹はなぜ勝てる?
「鈍感だと長くはやっていけない」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKyodo News
posted2018/05/31 11:15
3月31日のソフトバンク戦で初勝利し、ルーキーながらもすでに5勝を挙げている田嶋。早くも実力を発揮している。
「自分のフォーム」は試合中に探す。
田嶋には、「自分のフォームはこれ」という絶対的なものがない。あえてそれを作らないようにしている。
「型にはまりたくないんです。1つの形だけだったら投げていけない。僕は絶対無理です。だから試合によって、自分の調子によって、使い分けます。
いい時はずっと同じでいいけど、悪い時にも悪いなりに試合を作らないといけないから、試合中に、うまくはまるところを探します。『こうしたら指にかかりそうだな』というものが絶対にあるので」
臨機応変に微調整ができるのは、自分の体を知り尽くしているからだ。さらに、「自分の体が持っている力を最大限に使うためにはどうすればいいか」を常に追求し続けている。
田嶋は佐野日大高時代から、物事を突き詰めて考えることが好きだった。
「将来はプロ野球選手になりたい」という夢を語る野球少年は多いが、田嶋にとっては漠然とした夢ではなく、その目標から逆算し、そのために今、何が必要かを掘り下げていた。
「目標はプロ野球選手になることじゃなくて、プロで活躍することでした。そのためには、体が強くなきゃいけない、体についての知識を持っておかなきゃいけない、技術がプロレベルじゃなきゃいけない、ストレートが140キロ台か150キロ以上、といった枠ができる。
その枠からまた細かく枝分かれしていって、じゃあこういうトレーニングをやればいい、こういう食事を摂って疲労回復をはかればいい、というふうに、常に野球のことを考えていました。ただ『プロになりたい』『夢かなえたい』だけじゃなかったことが、今につながってるのかなと思います」
「自分の体の情報を知っておけよ」
加えて、JR東日本1年目に社会人の日本代表に選抜され、当時、東京ガスに所属していた1歳年上の山岡泰輔(オリックス)と出会ったことも大きかった。
「山岡さんに『自分の体の情報をしっかり知っておけよ』と言われて、そこから毎日、自分の体を気にしながら歩いたり、食べたりするようになりました」
例えば、片足立ちをして、「あ、今日バランスが悪いな。外側に偏っているな」と気づいたら、それを内側に修正するトレーニングをしてバランスを戻してから、投げる。感覚を研ぎすまし、大きなズレが生じる前に修正することで、怪我を未然に防いだり、調子の波を小さくすることができる。
「やっぱり自分の体を知らないと。鈍感だと長くはやっていけないですからね」
自分の体を知り、修正のしかたをわかっているから、プロでも壁は感じない。昼間に話を聞いた田嶋は自信にあふれていた。