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菊池雄星、エースという立場の苦悩。
勇気ある登録抹消から遂に一軍復帰。

posted2018/06/01 07:00

 
菊池雄星、エースという立場の苦悩。勇気ある登録抹消から遂に一軍復帰。<Number Web> photograph by Kyodo News

西武ファンだけでなく、アメリカからも熱い視線が注がれている菊池雄星。万全での復帰を期待したい。

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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Kyodo News

 ファームでの調整試合だというのに、メジャーリーグのスカウトは熱心だった。

 5月25日のヤクルトのファーム・戸田球場。ドジャース、フィリーズ、ブルージェイズなどのスカウトが観客席に陣取って、先発マウンドに立つ左腕を固唾をのんで見守っていた。

 そんなスカウトたちの前で150キロのストレートを投じた西武・菊池雄星は着々と復帰への道を歩み、6月1日、一軍マウンドへ帰ってくる。

「開幕から色々不安を抱えながら投げていたので、離脱してどうなるのかなと思ったんですけど、予想以上に早く回復ができました。正直、投げていて面白くないというのが離脱するまでの心境でした。万全の状態にする時間をもらえたので、これでようやく、気持ちよくピッチングができます」

「このまま投げていたらやばくなる」

 開幕5連勝を飾ったものの、菊池の2018年は躓きからのスタートだった。

 そもそもの要因は、シーズンまでのルーティンを前年と変えたことだ。

 菊池は例年12月くらいからキャッチボールを始めていたが、昨季は180イニング以上を投げたことを考慮して、そのスケジュールを遅らせる決断をした。リカバリーに重きを置いたのだが、これが仕上がりの悪循環を生んだ。

 キャンプ地の南郷の気候の問題もあり投げ込みを制限、本来踏むべき手順ではないままにオープン戦を迎えていたのだった。

 そして、開幕2週間前のオープン戦で左肩に痛みが走った。

「このまま投げていたらやばくなる」

 そう感じた菊池は、1イニング登板のみでマウンドを降りた。

 調整に遅れが生じていた上に、目いっぱいで投げたことが左肩の不調を招いた。故障というほどまでひどい状態ではなかったものの、もともと投げ込みが不足していたところに休みが加わったわけだから、開幕までにベストな状態をつくるのは難しかった。

【次ページ】 勝ってはいても苦しい投球だった。

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