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まるで黒澤映画の剣豪対決!
大谷翔平×田中将大、初対決の真実。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byAlex Trautwig/MLB Photos via Getty Images
posted2018/05/28 13:00
背番号19の田中将大と17番の大谷翔平のメジャー初対決は、三振と四球という静かな結果に終わった。
田中は“技”の投手へと変化していた。
第2打席は田中が慎重になりすぎて四球を出した。
初球の147キロのフォーシームが外角低めに外れ、2球目もスライダーがインコース低めに微妙に外れた。3球目のスプリットは空振りだったが、続く4球目はフォーシームが高めに抜けて、最後のスプリットもボールとなっての四球だった。
日本時代の大谷と田中の直接対決は2013年の1シーズンだけある。大谷がプロ入り1年目、田中が破竹の24連勝で楽天を日本一に導いたシーズンだ。そのときの2人の対戦は田中が11打数無安打6三振2四球と圧倒した内容を残している。
それから5年の月日が経った。
「今日だけでは難しいですけど、全体的にみたら変化球の割合が多いんじゃないかなと思う。良い悪いは別にして、そこが日本と少し違うのではないかなと思います。(ボールが)微妙に動いたり、そういうところも違うのかなと思う」
5年の年月を経た田中の変化を問われた大谷の答えだ。
日本では力で圧倒するパワーピッチでねじ伏せられた。しかし5年の時とメジャーというハードな環境の中で田中は技の投手へと変化していった。その真骨頂を見せつけられたのが、2つ目の三振を奪われた6回1死からの第3打席だった。
大谷の実力を田中がしっかり認めた試合に。
この打席は初球のフォーシームが低めに外れたが、続くスライダーを大谷がファウルチップ、3球目は149キロの外角低めに制球されたフォーシームを見送り。最後はきっちり低めに落とされた142キロのスプリットに大谷のバットが空を切った。
「際どいところにしっかり制球されていたので、なかなか打てなかったという感じでした。最後の打席は完全にあっちのペースで、自分が振らされたという感じでした」
試合後の大谷は、さすがに完敗を認めざるを得なかった。
「彼を抑えるのは容易ではない」
試合後の田中も、5年での大谷の変化を確実に感じていた。
「今シーズンはここまですごく打っていて、それだけでも神経を使う。加えて選球眼がいいので、臭いボールはなかなか振ってこなかった。今日は抑えられましたけど、容易ではないです」
5年間のギャップの後に見た打者・大谷には、確かにルーキーながらメジャーで結果を残している裏付けを見て取っていたのだ。