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魔術師マエケンが奪三振マシンに。
秘密は「技」と「力」のバランス。
posted2018/05/29 11:30
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Getty Images
奪三振率、11.72。(5月27日現在)
マエケンが今、ちょっと、凄い。
この数字は先発投手としてナ・リーグ9位を誇り、大谷翔平の11.60、ダルビッシュ有の11.03、田中将大の8.37を抑え、日本人投手では堂々のトップに立っている。
前田の投げる直球は平均で92マイル(約148キロ)だ。平均で95マイル(約153キロ)を超える大谷やダルビッシュほどの剛球はない。加えて大谷や田中が持つ鋭く落ちるスプリットもない。
なのに、彼は今、“奪三振マシン”の称号を持っている。これはなかなか面白い話と言える。
前田の投球の根幹を支える球種は直球とスライダーだ。変幻自在にスライダーを操る術は日本時代から“魔術師”とも表現されてきた。今季はこの2つに加え、カーブとチェンジアップを投げているが、昨季まで投げていたツーシーム、カットボールはほとんど投げていない。今季の球種別での割合は以下のようになっている。
直球 約50%
スライダー 約30%
カーブ 約10%
チェンジアップ 約10%
研究しつくされた立場、目立たない球速。
直球とスライダー中心。実にシンプルな配球であることもうかがえる。この持ち球で11.72もの奪三振率に達するには、直球の平均球速が95マイル(約153キロ)を超えることが一般的だ。11.88でリーグ2位につけるメッツのジェイコブ・デグロムがいい例だ。だが、前記した様に前田の直球のアベレージは150キロに満たないのである。
加えて、彼はルーキー投手ではない。2年連続で二桁勝利を挙げた3年目の先発投手である事実は、データ全盛のメジャーリーグに於いて、ボールの軌道、球種別の配球率など、全てが丸裸にされているといっていい。
その上で‘16年の9.17、'17年の9.38から奪三振率をさらに上昇させている。