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インテルもラツィオも泣いた最終節。
16年前に似たドラマのような死闘。
 

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手嶋真彦

手嶋真彦Masahiko Tejima

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photograph byGetty Images

posted2018/05/23 11:00

インテルもラツィオも泣いた最終節。16年前に似たドラマのような死闘。<Number Web> photograph by Getty Images

CLを巡る争いで明暗分かれたインテルとラツィオ。両クラブの復調はセリエAファンにとっては心打たれるものだ。

得点経過も奇妙な符合を描いた。

 奇妙な符合はドラマをより劇的にする。得点経過もまた16年前とよく似ていた。敗れる側が先制し、追いつかれる。

「5・5」はインテルのクリスティアン・ビエリが1-0とすれば、ラツィオのカレル・ポボルスキが1-1とした。今回の「5・20」はラツィオのアダム・マルシッチが1-0とすれば(記録はオウンゴール)、インテルのダニーロ・ダンブロージオが1-1とする。敗れる側がいったんは2-1と突き放し、勝利する側が2-2に追いつく展開も16年前と同じだった。

 決勝点となる3点目は、どちらもセットプレーからのヘディングで南米出身のMFが記録する。「5・5」はラツィオのディエゴ・シメオネ(当時のアルゼンチン代表)で、「5・20」はインテルのマティアス・ベシーノだ。「5・5」は4-2でラツィオが、「5・20」は3-2でインテルが勝者となった。

 16年前の「5・5」でダメを押したのが、どういう因果なのか、シモーネ・インザーギだった。73分に頭で押し込んだラツィオの4点目は、残りの短い時間で3点を返さなければならなくなったインテルの焦りを誘う効果が大きかった。

 とはいえ、当時は知る由もなかっただろう。16年後の「5・20」にラツィオの監督として挑み、先発メンバーの人選で葛藤することになろうとは――。

来季はインテルのデフライを使うのか?

 実際に迷いがあったのかどうかは、想像するしかない。ステファン・デフライを先発させるべきか、否か。オランダ代表のこのCBは最終ラインの不動の要であり、何もなければ当然のように先発させていたはずだ。しかし、「5・20」の少し前に、事情を変える事実が公になっていた。

 今夏で契約満了となるデフライの新天地が、これから重要な直接対決を戦うインテルに決まったと。

 主力中の主力であるデフライを「5・20」に先発させず、インテルに敗れれば、監督のインザーギ自身が責任を追及される。デフライを先発させて同じ結果に終われば、批判の矛先はインテルの一員となるそのCBに向かいかねない。

 怒りのあまり、スタジアムのラツィアーレ(ラツィオのサポーター)が暴徒と化すのではないか。そんな危惧すら聞こえてきた。どちらにしても、敗れた時の傷は深くなる。

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