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インテルもラツィオも泣いた最終節。
16年前に似たドラマのような死闘。
posted2018/05/23 11:00
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph by
Getty Images
最後にこんなドラマが待っていようとは――。
ラツィオが本拠地オリンピコにインテルを迎えたセリエA最終節(5月20日)は、シチュエーションが16年前の同じカードと似通っていた。試合展開も奇妙な符合を見せた。試合後、ベンチで肩を落とし、涙を流す選手がいたのも同じだった。
違っていたのは、悔し涙を流したドラマの主人公だ。16年前はインテルのストライカーが、今回はラツィオのCBが“悲劇”の主役となった。
ロナウドが涙した日から16年後。
インテリスタ(インテルのサポーター)には「5・5」と言うだけで、即座に共有できる過去の記憶がある。ワールドカップイヤーの2002年。5月5日のセリエA最終節だ。敵地オリンピコでラツィオから勝利を収めれば、自力で13シーズンぶりのスクデット奪還を成し遂げられた。しかし、あえなく逆転負けを喫して、その優勝盾を逃してしまう。
人目を憚らずベンチで涙を流したのが、無得点でその試合を終えたエースストライカーのロナウドだった。1997年夏にバルセロナから移籍したインテルでは怪我に苦しみ、1999年11月からの長期離脱は2001年10月までほぼ2年に及んだ。
2002年も年明けから欠場が続き、ようやく4月に復帰するとセリエAの3試合で4ゴールを奪って「5・5」に臨んでいた。試合後に流していたのは無念の涙だろう。5年間在籍したインテルではスクデットと無縁のまま、'02年夏にレアル・マドリーへ移籍した。
それから16年後、やはりワールドカップイヤーのセリエA最終節に敵地オリンピコでラツィオから勝利を収めればという、同じシチュエーションが訪れた。
今回の「5・20」は、チャンピオンズリーグ(CL)の出場権を懸けた戦いだ。報酬や賞金の桁が違うCL出場権の有無は、次のシーズンの予算を大きく変える。インテルが7シーズンぶりに出場権を獲得できれば、主力の引き留めやレンタル中の戦力の買い取りが可能となり、中長期的なチーム作りのプラスにもできる。その意味で最終節の勝利には、16年前に勝るとも劣らない価値があった。