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インテルもラツィオも泣いた最終節。
16年前に似たドラマのような死闘。
 

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手嶋真彦

手嶋真彦Masahiko Tejima

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photograph byGetty Images

posted2018/05/23 11:00

インテルもラツィオも泣いた最終節。16年前に似たドラマのような死闘。<Number Web> photograph by Getty Images

CLを巡る争いで明暗分かれたインテルとラツィオ。両クラブの復調はセリエAファンにとっては心打たれるものだ。

移籍先がなぜ漏れてしまったのか。

 渦中のデフライ自身は、先発出場を直訴したと言われている。これはあくまで噂にすぎないと断りを入れながら「ガゼッタ・デッロ・スポルト」紙が報じたのは、インテル戦直前のデフライの行動だった。ロッカールームを束ねるリーダーたちと対話した上で、SNSのグループチャットを利用し、チームメイト全員に伝えていたという。

「いろいろ言われているが、皆の近くにいたい。(インテル戦で)プレーしたい。なぜなら、シーズンの最後を締めくくる重要きわまりない試合だからだ」

 そもそもの問題は、公式戦がまだ残っているタイミングで、移籍先が明らかになってしまった経緯にある。ラツィオのスポーツディレクター、イグリ・ターレのその指摘は的を射たものだ。インテルへの移籍が決まったデフライには、本来のプレーは期待できない。手を抜くかもしれない。

 たとえ下衆の勘繰りだとしても、そうした邪推が出てくるのは未来を知ってしまったせいなのだ。知るべきではない未来を。

「いったいどこから漏れてしまったのか。インテルの関係者なのか、メディアなのか」

 ターレは嘆きながら、こう続けた。

「私なら、違ったやり方をしていただろう」

先発したデフライがPKを献上する悲劇。

 運命の「5・20」当日。ラツィオの先発メンバーに、デフライの名前はあった。噂通り出場を直訴していたのだとすれば、ここからは想像の域を出ないが、恩を返したい気持ちもあったのかもしれない。インテル時代のロナウドと同じように、'14年夏にラツィオの一員となったデフライも深刻な怪我で長期離脱を強いられている。ほぼ1シーズンを丸ごと棒に振ったのは、入団2年目の2015-16シーズンだった。

 ラツィオもCLの舞台からは遠ざかっている。最後の本戦出場は07-08シーズンで、久々のチャンスを得た2015-16シーズンはプレーオフで敗れていた。レギュレーションの変更により、今回はセリエAで4位の座を維持できれば予選免除で本戦からCLに出場できる。インテルと戦う最終節で必要なのは引き分け以上の結果だった。

 しかし、デフライが演じたのは悲劇の主人公だった。78分のPKは自身のファウルで与えたものだ。ラツィオのGKトマス・ストラコシャがクリアした直後、DFラインが不揃いになったギャップを素早く攻略された。必死の対応でマウロ・イカルディを倒してしまったデフライを責めるのは酷というものだろう。

【次ページ】 試合終了の瞬間、デフライは泣いていた。

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