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新潟・田中達也が手袋を外さぬ理由。
35歳ドリブラー、情熱と逆襲の予感。
text by
大中祐二Yuji Onaka
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/05/05 17:00
浦和時代はケガに泣いた田中達也だったが、新潟の地でいまだ健在ぶりを示している。
誰もがリスペクトする「達さん」。
山口戦翌日のオフ、練習が再開された翌々日と、新潟は2日連続で快晴、夏日となった。初夏のトレーニング場には、ゴールデンウィークとあって、200人以上のサポーターが見学に訪れた。
連敗を止めたチームは活気にあふれ、ここから反撃に転じようと、意欲的なトレーニングが展開された。そこでも、やはり手袋姿。これも風邪対策?
「体温が1度は上がりますからね。もう少し暑くなっても、まだ我慢できますよ!」
体温が上がれば、免疫力もアップということか。
いずれにせよ、ここから昇格レースに食い込もうとするチームにとって、同じ'82年生まれのDF富澤清太郎と並ぶ最年長の負けん気は、欠かすことのできない熱源だ。今シーズン、韓国2部の釜山から加入した安田も、その存在感に心を動かされる。
「なかなかリーグで出番がない中で、ルヴァンカップ(グループステージ第4節)のベガルタ仙台戦で素晴らしいゴールを決めたのに、続くリーグの大宮アルディージャ戦(第10節)ではメンバー外。あれだけの実績がある達さんが、試合に出たり、絡まなかったりしながらも、それでも毎日のトレーニングでは変わらず全力でサッカーに打ち込む。達さんを見て、何も感じない方がおかしいですよ」
20年前も今も、敵を絶対抜いてやる。
初夏の青空の下の手袋は、途方もない負けん気の証。それは、ごく私的なこだわりを飛び越え、やがてチーム全体を包み込んでいく。
現在チームは、鈴木政一監督が目指すサッカーの完成度を上げようと、試行錯誤の日々だ。
「一番は、グラウンドでプレーする僕らが、まだまだ実力不足だということ。1対1で負けないとか、基本的なところでまだまだ伸びなきゃいけない。1人の選手として、ベースを上げないと。その姿勢があって、初めてマサさん(鈴木監督)の目指すサッカーや、戦術が意味を持つ」
20年前、山口の土のグラウンドで、“目の前の敵を絶対に抜いてやる”とギラついていたサッカー少年の情熱は、今に直結する。J1昇格レースを戦うチームにとっての、突破口にもなる。