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新潟・田中達也が手袋を外さぬ理由。
35歳ドリブラー、情熱と逆襲の予感。 

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大中祐二

大中祐二Yuji Onaka

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photograph byJ.LEAGUE

posted2018/05/05 17:00

新潟・田中達也が手袋を外さぬ理由。35歳ドリブラー、情熱と逆襲の予感。<Number Web> photograph by J.LEAGUE

浦和時代はケガに泣いた田中達也だったが、新潟の地でいまだ健在ぶりを示している。

スタンドに響き渡る「よっしゃあ!」。

 それから20年以上の時を経て、才気煥発なドリブラーは、プロ選手として初めて故郷のピッチを駆けた。折しもアルビレックス新潟は、山口との対戦まで4連敗中。順位は14位まで後退し、まさに正念場だった。

 1-0でリードした63分、FW河田篤秀に代わってピッチに入った田中は、先発したターレスと2トップを組んだ。前半から効果的だった、前からプレッシャーを掛ける守備を再活性化し、山口が反撃しようと前掛かりになったところを利用して、逆に追加点を奪う。そんな思惑とは裏腹に、交代直後に同点ゴールを決められてしまう。

「失点してからずっと向こうのペースで、ピンチもあったし、運にも助けられました。でも、最後までみんなあきらめなかった気持ちが、PKにつながったと思います」

 試合の幕切れは劇的だった。矢野が倒されて得たPKを、安田理大が左隅に決めて勝ち越すと、直後に試合終了のホイッスルが吹かれた。あいさつを終え、ベンチの方へと向かいながら上げた、よっしゃあ! の雄叫びが、スタンド最上段の記者席まで聞こえてきた。

「発熱して自分だけ浦和に帰らされた」

 今年、36歳となる円熟のドリブラーは、究極の負けず嫌いでもある。手袋が象徴的だ。例えばアウェイゲームで遠征する際、季節に関係なく移動時に着用し続ける手袋は、絶対に風邪を引かない決意の表れである。

「プロになりたてのころ、アウェイの試合メンバーに選ばれていたのに、直前に発熱して1人だけ浦和に帰らされた経験があるんです。それが本当に悔しくて」

 理由はどうあれ、ライバルに絶対にチャンスを与えたくない。手袋のきっかけについて振り返る口調は、いまだに熱を帯びる。その様子に思い出すのが、以前、“ベテランの意地”について問うたときの答えだ。30代に突入し、若手には負けられない気持ちが日増しに強くなっているのでは。そんな愚問は、「年齢は関係ない」とあっさり否定された。

「僕は誰にも負けたくない。そう思ってずっと続けてきて、気づいたら、自分より年下の選手が増えていた。それだけです。年齢じゃない」

【次ページ】 誰もがリスペクトする「達さん」。

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