ひとりFBI ~Football Bureau of Investigation~BACK NUMBER
速いぞ、早いぞ長谷川トーキョー。
多摩川クラシコはマンC対リバプール。
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph byGetty Images
posted2018/05/04 07:00
第11節時点で2位のFC東京。川崎との多摩川クラシコは上位対決ということもあり重要度の高い一戦だ。
高萩は「奪取とパス」がセットに。
目下、首位を突っ走る広島に初めて土をつけた試合もそうだ。敵のビルドアップ(後ろからの組み立て)を破壊して、いとも簡単にゴールを奪ってみせた。
「わがチームの『司令塔』とは人ではない。ゲーゲンプレッシングだ」
そう語ったのは、ドイツの名将ユルゲン・クロップだが、FC東京の司令塔もボールを失った瞬間に発動するカウンタープレスだろう。そこで高萩洋次郎と橋本拳人という2人のセントラルMFが効いている。とにかく、ボールへの寄せが速く、激しい。
ミドルゾーンで効率よくボールを奪えるのも、彼らの働きに拠るところが大きい。高萩に至っては「奪取とパス」がセットになっている。奪った直後のキラーパスで決定機をつくってしまうのだから、話が早い。
反撃に転じた瞬間、味方のボールを追い越す動きも速い。鹿島に逆転勝ちした試合が、そうだ。右サイドバックの室屋成が後ろから脱兎のごとくライン裏に走り抜け、値千金の決勝ゴールをぶち込んでいる。
J随一の韋駄天・永井が止まらない!
例のボールを持ったら前へ――という動きが徹底されている。いや、それ以上に味方に対する信頼が深まっている証拠だろう。いくら前へと言われたところで、すぐにボールを失うリスクがあれば、おいそれとは前に出て行けないからだ。
そして、速いと言えば、何と言ってもこの人である。永井謙佑だ。J1随一の韋駄天が2トップの一角に収まってから、快進撃が始まったと言ってもいいくらいだろう。
走る、走る。相手ディフェンスの裏へガンガン走って、味方のパスを引き出す動きはもとより、サイドに開いてアシスト役に回り、相棒ディエゴ・オリヴェイラのゴールラッシュにひと役買っている。
ボールを失えば、快足を飛ばして瞬く間に相手ディフェンダーをロックオンだ。長谷川監督は永井について「ようやくフォワードとしての感覚が戻ってきた」と話す。長い間、ウイングで起用されてきた副作用で、FWらしい働きを演じるのに時間がかかった。
先週末の名古屋戦まで3戦連発。もはや、どうにも止まらない勢いだ。本来のポジションに戻ったことといい、チームの戦い方といい、永井にとっては、もってこいの環境だろう。選手の持ち味を生かすも殺すも、指導者(の使い方)次第――の好例だろうか。