プロ野球亭日乗BACK NUMBER
井端コーチが見抜いた岡本和真の才。
「一塁守備」で打撃向上の論理とは?
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2018/04/18 10:30
ホームランを放ち、菅野智之らにベンチで迎えられる岡本和真。21歳の「天才型」打者は、シーズンを通して活躍できるか?
「内野ではショートの次に難しいのが一塁」
「みんな一塁の守備を軽く見ているけど、自分が実際に経験してみて内野ではショートの次に難しいのが一塁。ボールを捕ると言うことだけではなくて、打球に対する動きや判断といったトータルでの難しさをあげたらやっぱり一番、大変なのはショート。でも次が一塁で3番目が二塁。三塁はそういう意味では動きが少なくて一番、簡単なんです」
井端コーチの言う簡単とは、もちろんかなりハイレベルな話ではある。ただ、一般的には一塁手の守備は軽く見られがちだが、それだけは違うとこう力説するのである。
「自分の守備範囲近辺に打球が飛んだら、他のポジションは、とにかくまずは全力でボールを捕りにいく。でも一塁手は一、二塁間の打球に対してベースを空けても自分が捕りにいくのか、それとも二塁手に任せるのかを一瞬で判断しなければならない。ヒットになったら、次の瞬間にはバックアップにいったり、状況によってはカットに入ったりと1つの打球に対してやることが一杯あるんです」
守備が上手くないとバッティングに影響する。
ホットコーナーと呼ばれる三塁手は、とにかく強い球に反応して、怯まずに捕球して正確に送球するだけだ。いわゆるカットマンとしての動きやバックアップもほとんどない。それに比べて一塁手は1つの打球に対してきちっとした判断と動きが求められる。
そういう難しいポジションだから、井端コーチは岡本の一塁守備も二人三脚で鍛え上げてきた。
その中で強調してきたことが、守備がうまくならないとバッティングに集中できないから、まずは守備をしっかりしようということだった。
キャンプから行ってきたノックも捕球練習だけではない。一、二塁間に転がして自分の守備範囲をしっかり把握させた。ファウルゾーンへのフライを上げて、打球の追い方、フェンスとの距離感のとりかた……本当に1つ1つに意味のある打球を打って、一塁手としての守備感覚を磨き上げた。
目立たないし、あまり話題にもならないが、井端はいまは岡本の守備力をリーグ1、2と見ている。
「(DeNAのホセ・)ロペスに匹敵するか、ひょっとしたらロペスよりうまいかもしれない」
その守備への自信が、結果的には売り物の打撃にも通じているというのだ。
「自分もそうだったんですよ」