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独善的な男が大木監督のもとで変身。
J2岐阜・田中パウロの決定力改革。
text by
渡辺功Isao Watanabe
photograph byJ.LEAGUE
posted2018/04/12 17:00
大木武監督のもとで脱皮しつつある田中パウロ淳一。子どもの頃の憧れはシェフチェンコだったとのこと。
サッカーの技術なんて難しい話じゃない。
大木監督によると、田中はシュートを撃つとき、上体がのけぞり気味に後方へ倒れてしまい、また足の親指がボールの下に入るため、蹴ったボールが自然と上へ浮いてしまっていたのだという。
「難しい話じゃないんですよ。言ってしまえば、サッカーの技術なんて、きっと全部がほんのちょっとのことなんです。だけど、それをやれるのか、やれないのか。そこが勝負だから」(大木監督)
J2で18位に終わった昨シーズン、チームの総得点は56。優勝してJ1に昇格した湘南ベルマーレに2得点差と、けっして少ない数字ではなかったのだが、田中には考えるところがあった。
「やっぱり上の順位に行くようなチームには、何点も決めている選手が必ずいます。で、その選手が警戒されることによって、ほかの選手が活きてくることがありました。ウチにはそういう選手がいなかった。僕自身もっと決められる選手になりたい。できれば、岐阜で一番点を獲れる選手になりたい。そうならないと上には行けないので。
これまで獲っている得点は、ほぼ周りのおかげですけど、それでも点を獲るプレーヤーにならないといけないですし。まぁエースと言うか……、エースになりたいなって気持ちでやっているので。そこが去年とは違います」
ちょっとした見直しで決定力は変わる。
決定力不足の解消は日本サッカー積年の課題だが、いまだ海外からストライカーを買ってくることでしか解決策を見出せないクラブも多く、持って生まれた才能が支配する領域だとの考え方も根強い。
そんな中にあって、ちょっとした技術の見直しと、90分間チームのためにプレーすることで、日本育ちの24歳のアタッカーがこのまま決定力を劇的に開花させることができたなら……。
現状に一石を投じる、大きなヒントになるのではないだろうか。