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名門ミランのエゴを束ねるカリスマ。
闘犬ガットゥーゾの揺るぎない強さ。
text by
手嶋真彦Masahiko Tejima
photograph byGetty Images
posted2018/04/11 11:00
少しシルエットは丸くなったが、眼光と威圧感はむしろパワーを増している。ミラン悲願の復活はこの男が実現するかもしれない。
就任後は大きく勝ち越して契約も延長。
ミランの低迷は長期化しており、2013-2014シーズン以降のセリエAは6位が最高だった。オーナーが代わり、大型補強を施して臨んだ今季も、ガットゥーゾの監督就任前は14戦して6勝2分6敗。第9節終了時は11位に沈み込んでいた。
それがガットゥーゾの監督就任後は9勝5分3敗。今年に入ってからは8勝3分1敗で、第31節まで終了した現時点では15勝7分9敗で6位にまで盛り返している。
4月5日には、ガットゥーゾとの契約更新がクラブから発表された。新契約は2021年6月まで。3年の延長は信頼の表われだろう。
クラブ世界一に輝いた2007年当時と比べれば明らかに見劣りするとはいえ、いまだセリエA屈指の選手が揃っているミランのようなビッグクラブの監督に、ガットゥーゾはもともと向いていたのかもしれない。
チームを“その気”にさせる監督。
腐っても鯛と言っては失礼だろうが、ミランはいまなおトップエリートの集団であり、容易に想像できるのは取り扱いの難しいプライドとプライドのぶつかり合いだ。エゴの暴走をひとたび許し、対処を誤れば、空中分解に至ったとしてもおかしくない。
無数のエゴと対峙しながら、集団をひとつに束ね、しかもそれぞれの個性を発揮させるのがカリスマの仕事だとするならば、人としての傑出した“強さ”を備えているガットゥーゾほどの適任者はそういない。
「どんなに困難な状況に置かれても、チームを“その気”にさせられる監督だ」
言葉の主は、ジャンルカ・ザンブロッタ。現役時代にミランとイタリア代表の両方でガットゥーゾのチームメイトだったザンブロッタのように、そのモチベーターとしての手腕を賞賛する声もある。
彷彿とさせる同業者としては、アトレティコ・マドリーのディエゴ・シメオネや、チェルシーのアントニオ・コンテの名前が聞こえてくる。