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東海大相模はなぜ序盤に打てるのか。
聖光学院を圧した“序盤力”の正体。
posted2018/03/27 14:30
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
Kyodo News
想定内――。
東海大相模の打線の前に完膚なきまでにやられた聖光学院の斎藤智也監督は試合をそう振り返った。
スコアは12-3。
2回戦のなかで屈指の好カードと目されながら大差がついたが、斎藤監督が想定内と振り返ったのには少し裏がある。それは「これくらいの失点はある程度覚悟して、勝つとしたら11-10」の展開と予想した中での「想定内」という発言だったのだ。
12失点自体は、想定が大きく外れたわけではない。しかし、追いかける展開のなかで攻撃陣が奮起できなかったことが、そのまま結果に繋がったといえる。
ノーガードの打ち合い覚悟の試合への臨み方は理解できるが、東海大相模の戦いを見る限り、その失点が序盤に固まると致命的になる。というのも、東海大相模は強いときこそ「序盤力」を発揮するチームであるからだ。
初回が野球のすべてではないものの。
例えば、2015年夏の優勝がそうだった。
今日対戦した聖光学院との2回戦に始まり決勝までの5試合中4試合で、序盤に4得点以上を挙げている。決勝戦のように終盤までもつれた試合がなかったわけではないが、序盤に力を入れて戦いを優位に進めてくるのだ。
今大会も、序盤力を発揮するのが東海大相模らしい戦いだ。
1回裏、先頭の打席にたって左前安打で出塁した小松勇輝は言う。
「初回が野球のすべてとまではいわないですけど、大事なイニングだと監督からも言われています。自分は1番バッターを任されているので、1回の打席は気合を入れて打席にはいりました。相手の先発投手はスライダーが多いというのは分かっていたので、ヤマを張るくらい大胆に攻めていきました」
東海大相模の門馬敬治監督が「あれでチーム全体が勇気をもらった」という小松の一打から好機をつかむと、1回に6得点。ビハインドからのスタートだったのだが、序盤に大差をつけたことで試合の主導権を握った。