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東海大相模はなぜ序盤に打てるのか。
聖光学院を圧した“序盤力”の正体。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byKyodo News
posted2018/03/27 14:30
東海大相模のエース齋藤礼二は初回に3ランホームランを放ち、試合の流れを自力で大きく傾けることに成功した。
序盤に点を取るための方法がある。
とはいえ、一口に「序盤力」といっても、「1回に点を取れ」と指揮官が指令したからといって簡単に入るものではない。その背景には指揮官からの仕向けと選手個々の準備力があるからに他ならない。
門馬監督は「序盤力」が発揮できる理由をこう語る。
「選手たちにいつも言うのは、球場に入る前からベストな状況にもっていこうということです。試合が始まってからではなく、試合前の室内練習場で1試合をこなすくらいの気持ちで入っていこうと話しています。実際に球場に入ると気持ちは変わりますけど、ベストな状況をつくっていこうと」
気持ちとコンディションを最大限に上げて試合に入る。そして心身のコンディションを整えたうえで、当然技術面にも抜かりはない。
相手の投手陣に対する入念な対策。
この日の相手だった聖光学院は、先発したサイド左腕・高坂右京、2番手に投げた右投げの上石智也と2人のタイプの異なる投手がいたが、相手投手に対する事前準備をしっかり行なっていた。
2番打者の山田拓也はこう証言する。
「相手の先発を決めつけると間違ったときに(悪い方へ)はまるので、今日の先発は左投手だろうという話まではしなかったんですが、僕らは左打者が多いので、左投手は頭の中にありました。先発投手が発表された時に『やっぱりな』という声が出ていたくらいですから。ビデオでもしっかりチェックしたピッチャーなので、(チーム全体で)いい準備ができていたと思います」
1回表に先制されてはいたものの、相手の出鼻をくじき、自分たちも波に乗っていく。小松から始まった一気の攻撃、そして2回にも3得点を挙げ、この時点で試合を制したようなものだった。
斎藤監督が「これくらいの失点は覚悟していた」といったのは、現状の投手陣と相手打線の兼ね合いを考えてのことだろう。失点覚悟の戦いを目指して打ち勝っていかない限り、甲子園の強豪校には勝てないと日ごろから口酸っぱく言っている。