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21世紀枠が示した高校野球の多様性。
私立の強豪だけが野球ではないのだ。
posted2018/03/26 17:30
text by
中村計Kei Nakamura
photograph by
Kyodo News
大会4日目となった26日、21世紀枠で選ばれた3チームが戦いを終えた。
24日に由利工(秋田)が日大三(東京)に0-5、膳所(滋賀)が日本航空石川に0-10でそれぞれ完封負けを喫し、この日、伊万里(佐賀)が大阪桐蔭に2-14で大敗。21世紀枠で選ばれた3校は、2年連続で0勝に終わった。
伊万里-大阪桐蔭戦、0-14で迎えた8回表、レフトオーバーのタイムリー安打で3チーム中、最初の1点を刻んだ伊万里の末吉竜也はこう胸を張る。
「21世紀枠はそれまで1点も取れてなかったので、自分たちは絶対に1点取ろうと話していた。最後まであきらめない野球を見せられたことは自信になった」
昨年も3チームのうち、不来方が3-12、多治見が0-21と大敗。あまりに実力差があり、打球スピードの違い等を考えると危険ではないかとさえ思えた。
もちろん21世紀枠は、単純に「勝てるチーム」を選んでいるわけではない。とはいえ、21世紀枠の存在意義が、改めて問われる結果となった。
膳所のデータに基づく大胆な守備戦術。
0-10と、点数上は完敗に終わった膳所の上品充朗監督は、こう胸の内を明かす。
「正直、怖いんです。こうして選んでいただいたのに、ゲームを壊してしまって、この枠自体がどうなのかと言われることが。でも選手には、大敗したとしても選んだ理由を出そうと。2ケタ失点で終わりましたけど、評価してもらったものは出せたと思います」
膳所の売りは、相手打者のデータ分析による、野手の大胆なポジショニングだった。序盤3イニングスはそれが奏功し、0点に抑えた。日本航空石川の中村隆監督も、こう舌を巻いた。
「10試合ぐらいのデータを集計したと聞いたのですが、それだけでもここまで正確にわかるのかと。驚きましたね」