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メジャーでもマイペースな平野佳寿。
ボケて笑わせ、周りを観察する1年目。
posted2018/03/28 08:00
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
AFLO
平野佳寿のもとにアリゾナ・ダイヤモンドバックスの地元メディアがやってきたのは、キャンプ半ばのことだった。
オフの間にオリックス・バファローズからダイヤモンドバックスへ移籍してきた34歳の新人は自ら「通訳なしでやるわ」と言いながら、質問を待った。
「今年からダイヤモンドバックスはブルペン・カーを使う予定なんだけど、どう思う?」
軽く投げかけられた質問に、平野は考え込むふりをして、こう答えた。
「んーそうですねぇ。僕、やっぱり、宇治の出身なんでね……」
日本茶と10円玉の絵=平等院鳳凰堂で名高い京都府宇治市の出身であることと、ブルペン・カーとはもちろん、何の関係もない。いわゆる「ボケ」である。
やはり関西人気質があるのか、と思っていると、とても無邪気なことを続けて言う。
「日本では普通にブルペン・カーってあるんで、逆にブルペンから音楽に乗って、走って登場する方がカッコエエかな、と思うんですよね」
慣れるべきことは、数え切れないほどある。
首脳陣や同僚から、いつの間にか「Yoshi」と呼ばれるようになった平野は今春、そんな風に米国の流儀に自分流を合わせて、プロ野球生活13年目のシーズン開幕に向かっていた。
「まず何よりも、こっちのやり方に慣れていかないといけないと思う」
キャンプが始まった頃、例年よりも肌寒い日が続くキャンプ地アリゾナ州スコッツデールで、彼は口癖のように言った。
日本人投手が苦労するという「滑るボール」やアリゾナ州特有の「乾燥した空気」はもちろん、野手との連係プレーの際に聞かれる「英語での掛け声」、極端な守備シフトの中で、投手はどう動くべきなのかという「日本とは少し違う考え方」、通訳を介した日本語と英語の「コミュニケーション」等々。
慣れるべきことは数え切れないほどあった。