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メジャーでもマイペースな平野佳寿。
ボケて笑わせ、周りを観察する1年目。 

text by

ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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photograph byAFLO

posted2018/03/28 08:00

メジャーでもマイペースな平野佳寿。ボケて笑わせ、周りを観察する1年目。<Number Web> photograph by AFLO

平野佳寿のマイペースはダイヤモンドバックスでも認められつつある。ベテランになってからの渡米にもメリットはあるのだ。

アウトの内容が信頼を作り上げる。

 平野はつまり、オープン戦を試金石と捉えていた。日米のメディアが「クローザー候補3人の内の1人」と騒ぎ立てても、「今まで自分からクローザーがやりたいなんてひとことも言ったことがないんですよね」と無関心なままで、まず何よりも「自分の球がどこまで通用するのか?」を冷静に見極めようとしていた。

 そして、そうすることが可能だったのは、内容のあるアウトを取って、首脳陣の信頼を築き上げていたからだ。

 アウトの取り方は、とてもシンプルだ。

 ピッチングの基本に忠実に、速球を外角低めに決める。スライダーを左打者の外角=バックドアに決めて、ストライクを先行させる。力のある速球を高めに投げてファールや空振りを取って、カウントを有利にする。フォークボールの落差を変えてストライクを取ったり、空振りを狙ったり……等々。

 そうこうして積み重ねた内容のあるアウトが、「ヨシ・ヒラノ」は「信頼するに値する投手」という評価を首脳陣の間に植え付けた。

 オープン戦における6点台の防御率だけを見れば不安だらけに思えるが、失点に必ず明確な理由があったことと同様、8回で9個もの三振を奪ったことにも明確な理由があったのだ。

「オープン戦を重ねるにつれてメジャーの球にもマウンドにも慣れてきたし、最初の頃よりは自分のピッチングができるようになった実感はあります。でも、まだオープン戦なんで、シーズンとは緊張感も違いますし、そこは経験してみないと分からないこともある」

メディアを笑わせた一言。

 3月23日のインディアンス戦では、相手の中軸であるラミレス、ブラントリー、エンカーナシオンといった長打力のある打者たちを三者三振に抑えて見せたが、慢心するようなことは一切なく、「フォークボールもそんなに決まってなかったし、今日は全部、真っ直ぐが引っ掛かっていた」と不満を口にする。

 結局のところ、彼にとっては3戦連続で本塁打を許すことも、インディアンスの主軸打者から三者三振を奪うことも、等しく意味のあることだったのだ。

 そこにある事実、日本では経験できなかったことをありのままに受け止め、消化すること。それこそはAdjustment=適応。「メジャー挑戦」を成功に導くための、とても大事で、とても地道な作業である。

 件の米国メディアとのインタビュー。あらためて通訳を付けてやり直すと、平野はこう言って、日米のメディアを同時に笑わせた。

「疲れてきたらブルペン・カーを使うかも……そう、ブルペン・カーに乗って登場するようになったら、疲れている証拠だって訳しておいて」。

 マイペースで進む、ベテラン右腕。シーズン開幕がとても楽しみになってきた。

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平野佳寿
アリゾナ・ダイヤモンドバックス

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