マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
センバツ屈指の投手王国、松山聖陵。
プロ注目の土居豪人だけじゃない。
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2018/03/27 13:30
松山聖陵を率いる荷川取監督は、自身が高校生時代に沖縄尚学でセンバツ優勝を経験している。
おおいかぶさるような威圧感。
立ち投げの投げ始めで、もうOKだと思った。
体重が自然に前に乗ってくるのがわかる。意識しなくても、体が勝手に「体重移動」という難しい作業をやってのけている。
後ろ(右投手だから右足)の股関節が、前の股関節に乗ってくれば、あとはそこから連動して、上半身が勝手に動いてくれる。
腕を振ろうとしなくてもいやでも腕を振れるように、体の構造がそうなっている。
気分よさそうに、土居豪人が腕を振る。
前の股関節が後ろの股関節を受け止めている1秒か2秒の間に、ボールを握った右手がほどよい高さをとれて、真上から腕を振り下ろす。
そのボディーバランスとリズムが、なんともいえずここちよい。
センバツの実戦で、同じバランスとリズムで投げられたら、打者は構えた段階からもうヘッドアップしているような、それほどの角度を感じるはずだ。こっちに向かって、おおいかぶさってくるような威圧感。
昨秋は2試合で19四死球だったが……。
この日のブルペンでも、140キロ前半はコンスタントに出ていたと思う。1mほどもありそうな長い右腕が生み出す腕の振りの運動量も大きく、その運動量が生み出す“遠心力”に腕力が負けていないから、高く抜けた子どもっぽいボールがない。
これで本当に、昨秋の四国大会の2試合で19個の四死球を与えた投手なのか。
この冬の懸命な鍛錬に思いが及ぶ。
「めっちゃくちゃ楽しみじゃないですか! フォームに我流のへんなクセもないし、走り方見ても、あれだけの長身なのにいいバランスで走るし。このまま春から夏にかけて体の力がついてくれば、普通に150キロ投げてると思いますよ、夏の予選のころは」
四国を担当する楽天・山下勝己スカウトは、胸の高鳴りを隠さない。