新2年生にも、大柄な投手が。

　そんな土居豪人の横のマウンドで投げているもう1人の右腕が、さっきから気になってしょうがない。

　捕手の後ろ側から見ると同じぐらいの背丈だが、肩幅は広く見えて、体の厚みは土居よりたくましい。

　実は、さっきの投内連係の時から、「誰だろう……？」と思いながら見ていた投手だ。

　自分の番が来て、控えていたファールエリアからマウンドへ向かっていく後ろ姿が、なんともこちらの胸を打ったからだ。

　よっし、オレの番だ！

　そんな気迫がじんわりと伝わってくるしっかりとした足どりで、小走りにマウンドに向かう。

　顔がいつも前を向いていた。

「いえ、新2年生なんです。いやぁ大きいだけで、まだまだですよ……」

　荷川取（にかどり）秀明監督は照れたように謙遜したが、「めっちゃくちゃ楽しみにしてるんですよ、来年は」、お顔にしっかり書いてある。

センバツに2年生の大型右腕が出たら。

　左足を踏み込んだ半身の姿勢が長く続いて、右足に体重が移ったギリギリのタイミングで、体の左右が一気に切り換わり、しなやかに腕が振り下ろされる。

　ボールに指がかからないわけがない。

　回転のほどけない粘っこいストレートがミットを叩く。

　フォームが安定しているから、リリースポイントにもブレがなく、球筋が安定している。この体、このフォーム、145キロ前後は“あっという間”のはずだ。

　2番手にこんな投手がいるんだ……と思ったら、これほどの投手なのにセンバツのベンチ入りは「考え中」だという。

　きっと秘密兵器なのだろうから、ここで名前を明かしたら、チームに迷惑がかかるかもしれない。

　本番で、もしこんな感じの2年生の大型右腕が、リリーフのマウンドにでも上がったら、「ああ、このピッチャーがあの……」と思い出していただくのも、ちょっとした楽しみかな。そう考えて、ここでは伏せたままにさせていただく。

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