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中島翔哉はハリルJ救世主となるか。
「僕は海外向き」を証明できた理由。
text by
西川結城Yuki Nishikawa
photograph byGetty Images
posted2018/03/13 17:00
屈強な相手守備陣を切り刻む中島翔哉。日本代表の欧州遠征でもその絶好調ぶりを見せられるか。
Jでは“空気の読めない”タイプだった。
日本にいた頃から、特異なプレーとサッカー観を貫いていた印象だった。
組織だったチームプレーや、連係面を優先しがちな日本人。そんな空気感が漂うJリーグの試合において、中島はある意味“空気の読めない”プレーヤーだった。いや、むしろ自ら鈍感ぶりを装ってまで、自分が信じるプレーをやり続けていたと言ったほうが正しいかもしれない。
ボールを受ければ、ひたすら前に仕掛ける。眼前のDFに怯える素振りはない。隣にはサポートに入る味方もいる。ただ彼らを使うのは、独力突破できなくなってからの最終手段。とにかく前に、縦に進むことだけを考えていた。
そのプレーぶりには、賛否両論あった。集団で相手を崩そうとしないのは合理的ではないといった指摘が飛ぶこともあれば、誰に遠慮することもなくゴールに一直線に向かうプレーを頼もしいと評価する意見も出ていた。
「やっぱり僕は海外向きなんだと」
そんなことを本人に聞くと、他人の考えはまったく意に介さないといった素振りで、笑いながらこう返されたことがあった。
「周りのみんなも、サッカーでは僕がワガママだということをわかってくれています(笑)。プレーでも自分が攻めた時には、周りがカバーに入ってくれることもある。もともと、プレーでは他人の指示をあまり気にしない性格なので(笑)。そういう意味でも、やっぱり僕は海外向きなんだと思います」
昨年インタビューした頃から、自分は海外向きと宣言していた。確かにJリーグのピッチでの彼の姿は、どこか窮屈そうだった。
それが、今やポルトガルでブレイク。毎週末に届けられる映像を観ても、ボールを持てば気持ちよく前に仕掛け、シュートやパスを繰り出していく中島がいる。そしてそんなプレーを、周囲の味方も違和感なく受け入れている様子だ。
日本では特異だったプレー観が、欧州で華ひらく。もはや誰にも文句を言わせない。中島がようやく勝ち取った評価である。