サムライブルーの原材料BACK NUMBER
森重真人がルーティンを壊した理由。
W杯のためにも「安定より成長を」。
posted2018/03/13 11:30
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Yuki Suenaga
センターバックは危機察知能力がないと務まらない。
予測と対処。ピッチで求められることは、人生においても同じなのかもしれない。自分の身に迫る「危機」を前もって感じ、その最中にあってもうろたえることなく克己する。
森重真人は、開幕に合わせて8カ月ぶりにピッチに戻ってきた。
さり気なく、そして飾り気なく。
経験豊富な人らしく、落ち着いた対処には貫禄が漂っていた。危機と戦った対価が、そこにはあった。
2017年、彼には大きな危機が押し寄せた。
先のブラジルワールドカップ以降、日本代表でレギュラーを張ってきた男は6月のイラク戦メンバーから外された。サブに回るどころか一気に選外へ。ヴァイッド・ハリルホジッチは代表、FC東京における森重のパフォーマンスに納得していなかった。チームも勝ち切れず、順位を上げていくことができなかった。
悪いことは続くものである。7月のセレッソ大阪戦で左腓骨筋腱脱臼の大ケガを負い、全治4カ月の診断が下った。
「負のパターンかもな、と」
ショックに打ちひしがれる姿を想像しがちだが、実際はそうではない。彼は危機察知能力を働かせて最悪のケースを想定に入れていたという。
「(代表メンバーから)外れるかもしれないなっていう感じは自分のなかでありました。そのときに思ったのがひょっとしたら(悪いことの)続きがあって、負のパターンかもな、と。想定内というわけではないですけれど、頭のなかに入れていたことだったので」
負の連鎖は、以前も経験したことがある。
大分トリニータ時代の2009年。残留争いの渦中にあった9月、右ひざ外側半月板損傷でチームを離脱。手術を余儀なくされ、チームもJ2に降格した。
翌年にFC東京へ移籍を果たしたものの右ひざの回復は思った以上に時間が掛かり、自分のイメージどおりに体が動くようになったのは秋に入ってから。残留争いから抜け出せず、またしてもJ2降格を味わうことになった。
これを契機に日常生活や練習の取り組み方を根本から変えていき、まさしく日本を代表するセンターバックに成長していくことになる。